誹謗中傷の開示請求を弁護士が徹底解説!費用から流れ、加害者の末路まで

誹謗中傷の開示請求は、SNSや掲示板で匿名の誹謗中傷を受けた際に、投稿者を特定して損害賠償請求や刑事告訴を行うための法的手続きです。2022年の法改正により手続きが簡略化され、従来半年~1年以上かかっていた期間が3ヶ月~1年程度に短縮されました。弁護士費用は50~100万円程度かかりますが、慰謝料は10~50万円程度が相場のため費用倒れのリスクもあります。成功の鍵はログ保存期間(3~6ヶ月)内での迅速な対応です。

誹謗中傷の開示請求とは何ですか?基本的な仕組みを教えてください

そもそも開示請求で何ができるの?

発信者情報開示請求は、匿名で誹謗中傷を行った投稿者の氏名・住所・電話番号等を特定する法的手続きです。

プロバイダ責任制限法という法律に基づいて行われ、投稿者を特定することで損害賠償請求や刑事告訴といった次のステップに進むことができます。単なる犯人探しではなく、受けた被害を回復し、加害者に正当な責任を追及するための第一歩となる重要な手続きです。

開示請求の対象となるのは、以下のような権利侵害が明白なケースです。

権利侵害の種類具体例 
名誉毀損「〇〇社のA部長は賄賂を受け取っている」などの具体的事実での攻撃
侮辱「バカ」「死ね」などの人格攻撃
プライバシー侵害住所、電話番号、病歴などの個人情報の無断公開
肖像権侵害無許可での顔写真や動画の公開

2022年の法改正で何が変わったの?

2022年10月に施行された改正プロバイダ責任制限法により、「発信者情報開示命令」という新しい手続きが創設されました。

従来は、サイト運営者とプロバイダに対して最低2回の裁判手続きが必要でしたが、改正後は1回の裁判手続きで両者に命令を出せるようになりました。これにより、投稿者特定までの期間が半年~1年以上から3ヶ月~1年程度に短縮され、被害者の負担が大幅に軽減されています。

さらに、ログイン時の情報も開示対象であることが明確化され、X(旧Twitter)などでも特定できる可能性が高まりました。

開示請求が認められないケースはある?

すべての誹謗中傷で開示請求が成功するわけではありません。権利侵害が軽微な場合や、単なる意見・感想の範囲内と判断される場合は、請求が認められない可能性があります。

また、政治家への批判など公益性・公共性が認められる場合や、プロバイダのログ保存期間(3~6ヶ月)を過ぎてしまった場合は、開示請求自体が不可能になることもあります。海外の匿名化サービス(VPN)を利用している場合等も、追跡が極めて困難です。

開示請求にはどのくらいの期間と費用がかかりますか?

投稿者特定までの具体的な流れと期間は?

開示請求の手続きは、大きく分けて以下の4つのステップで進行します。

  1. 証拠保全とサイト運営者への請求
    誹謗中傷の投稿を発見したら、すぐにスクリーンショットで証拠を保全します。その後、裁判所を通じてX社などのサイト運営者に対し、投稿者のIPアドレスとタイムスタンプの開示を請求します。
  2. プロバイダの特定とログ保存請求
    開示されたIPアドレスから投稿者が利用したプロバイダ(NTT、KDDI、ソフトバンクなど)を特定し、通信記録が消える前にログの保存を要請します。
  3. プロバイダへの契約者情報開示請求
    裁判手続きを通じて、プロバイダから投稿者の氏名・住所・電話番号などの契約者情報を開示してもらいます。
  4. 加害者への法的措置(約1~3ヶ月)
    特定した加害者に対し、示談交渉や訴訟、刑事告訴を行います。

新しい手続きを利用した場合、投稿者特定まで約3ヶ月〜1年程度かかります。ただし、ログの保存期間は3~6ヶ月と非常に短いため、誹謗中傷を発見してから1日でも早く、弁護士に相談することが理想的です。

開示請求にかかる費用の内訳を教えて

開示請求には、裁判所に納める「実費」と「弁護士費用」の2種類の費用がかかります。

弁護士に依頼した場合の総額は50万円~100万円程度が一般的な目安です。内訳は以下の通りです。

  • 実費:10~31万円程度(収入印紙代、郵便切手代、担保金10~30万円など)
  • 弁護士費用:40~80万円程度(着手金+成功報酬)

担保金は仮処分の申立を行わない場合は不要で、請求が認められれば基本的に返還されますが、弁護士費用は事務所によって料金体系が異なるため、依頼前に詳細な見積もりを確認することが重要です。

費用倒れになるリスクはどれくらい?

開示請求で最も注意すべきなのが「費用倒れ」のリスクです。

誹謗中傷の慰謝料相場は、個人の場合で名誉毀損が10~50万円、侮辱が1~10万円程度です。つまり、弁護士費用50~100万円をかけても、回収できる慰謝料がそれを下回る可能性があります。

あるYouTuberは、80万円の弁護士費用をかけて投稿者を特定したものの、獲得できた賠償金は10万円で70万円の赤字になったという実例を公開しています。ただし、開示請求にかかった費用は「損害」として加害者に請求できるため、裁判所が認める範囲で回収できる可能性もあります。

投稿者を特定したらどうすればいいですか?慰謝料の相場は?

特定後の2つの選択肢とは?

投稿者の身元が判明したら、民事と刑事の2つの選択肢があります。

損害賠償請求(民事)は、精神的苦痛に対する慰謝料や開示請求費用を金銭で賠償してもらう手続きです。まずは示談交渉から始め、合意できなければ民事訴訟を起こします。多くの場合、弁護士が代理人として加害者と交渉し、慰謝料の支払い、投稿の削除、謝罪文の送付、今後同様の行為をしない誓約などについて合意を目指します。

刑事告訴(刑事)は、警察に犯人の処罰を求める手続きです。名誉毀損罪は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、侮辱罪は1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。ただし、刑事告訴では慰謝料は得られないため、別途民事での請求が必要です。

実際にもらえる慰謝料はいくら?

慰謝料の金額は、権利侵害の種類や被害の大きさによって異なります。

権利侵害の種類個人の慰謝料相場企業の慰謝料相場 
名誉毀損10~50万円50~100万円
侮辱1~10万円
プライバシー侵害10~50万円

被害者が有名人の場合や、誹謗中傷により休職・退職・売上減少などの実害が生じた場合は、相場より高額になる可能性があります。一方、一度きりの投稿で被害が軽微な場合は低額になる傾向があります。

もし自分が開示請求されたらどうすべき?

プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたら、あなたの書き込みに対して開示請求が起こされたという通知です。

最も重要なのは、無視したり安易に拒否したりしないことです。無視すると「開示に反対しない」と判断され、個人情報が開示される可能性が高くなります。まずは弁護士に相談することをおすすめします。速やかに非を認めて謝罪の意を示すことで、賠償金を減額できる可能性があります。

悪質な書き込みの場合は逮捕される可能性もあり、有罪判決を受ければ前科がつきます。軽い気持ちで行った書き込みでも、職を失ったり人間関係が崩壊したりするなど、計り知れない社会的制裁を受けることにもなりかねません。

開示請求は自分でもできますか?弁護士に依頼すべき?

個人での開示請求が難しい理由は?

費用を抑えるために自分で開示請求を試みる方もいますが、成功まで持っていくのは容易ではありません。

開示請求には高度な法的専門知識が必要で、要件を満たしているかの判断や法的に有効な書面の作成は非常に困難です。また、複数の裁判手続きを同時並行で進める必要がある場合や、平日に何度も裁判所へ出向く場合があるなど、多大な時間と労力がかかります。

最大の問題は、ログの保存期間が3~6ヶ月と非常に短いことです。書類の準備に手間取っている間に保存期間が過ぎてしまい、特定不能になったという失敗事例は非常に多いと言われます。サイト運営者やプロバイダも、個人からの請求は軽視する傾向があるとも言われます。

弁護士に依頼するメリットは何?

誹謗中傷問題を弁護士に依頼することで、成功率が格段に向上することが見込まれます。

弁護士は豊富な経験と専門知識に基づき、的確な主張と証拠提出を行います。複雑でストレスの多い手続きをすべて任せられるため、被害者は精神的な回復に集中できます。また、投稿者の特定だけでなく、その後の示談交渉や訴訟、刑事告訴まで一貫してサポートしてもらえます。

費用倒れのリスクについても、過去の判例から賠償額の見通しを立て、最適な解決策を客観的に提案してくれます。時間との勝負である開示請求において、迅速かつ確実に対応できる弁護士の存在は不可欠と言っていいでしょう。

どんな弁護士を選べばいい?

誹謗中傷問題は専門性が高いため、インターネット投稿トラブルの解決実績が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。

法律事務所のウェブサイトで、誹謗中傷や開示請求に関する解決事例が多数掲載されているかを確認しましょう。また、着手金や成功報酬など料金体系が明確に提示されているかも重要なポイントです。

無料相談を活用して、親身に話を聞いてくれるか、専門用語を分かりやすく説明してくれるかなど、コミュニケーションの取りやすさも確認することをお勧めします。

よくある質問

X(旧Twitter)やYouTubeでも開示請求はできますか?

はい、X(旧Twitter)やYouTubeでも開示請求は可能です。

X(旧Twitter)は2022年の法改正により、ログイン時の情報も開示対象となったため、以前より特定しやすくなっています。YouTubeのコメント欄での誹謗中傷も開示請求の対象です。ただし、これらは運営会社が海外法人のため、通常より時間と費用がかかる可能性があります。5chなどの匿名掲示板も開示請求は可能ですが、運営会社が海外にある場合が多く、手続きが複雑化する傾向があります。

警察に相談すれば開示請求してもらえますか?

警察は民事不介入のため、開示請求の代行はしてくれません。

ただし、「殺す」「火をつける」といった殺害予告や放火予告、身体への危害が及ぶ脅迫、ストーカー行為、リベンジポルノなど、犯罪性が高く緊急性のあるケースでは、警察が独自に捜査を開始することがあります。この場合でも、慰謝料請求などの民事手続きは別途自分で行う必要があります。一般的な誹謗中傷の場合は、まず弁護士に相談することをお勧めします。

開示請求にかかった費用は相手に請求できますか?

はい、開示請求にかかった弁護士費用や調査費用は「損害」として加害者に請求できます。

近年の裁判例では、特定にかかった費用を損害として認める傾向が強まっています。ただし、支払った費用の全額が認められるとは限らず、事案の悪質性や相当性を考慮して裁判官が判断します。それでも、費用の一部または大部分を加害者に負担させられる可能性は十分にあるため、諦めずに請求すべきです。

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不安がある方へ

弁護士、専門家へのご相談のご経験があるかはそこまで多くないと思います。ちょっとしたポイントを抑えていただくだけで、ご自身のお悩みの解決方法が見つかりやすいことがあります。ご不安を感じられる方はぜひ、このポイントを抑えたうえでご相談ください。

  • POINT 1

    相談をオンラインでしている様子

    早めのご相談

    「まだ大丈夫」と思っていても、早めに相談することで安心につながります。弁護士は身近な相談相手として、問題が大きくなる前の解決をサポートしてくれます。

  • POINT 2

    書類のイメージ

    書類や文書の整理

    相談には契約書や領収書、メモなど関係しそうな資料をできるだけ整理しましょう。自分では些細に思えても、弁護士にとっては大切な手がかりになることがあります。

  • POINT 3

    時系列を整理している様子

    時系列の確認

    問題の流れを日付順に整理してメモしておくと、弁護士が状況を理解しやすくなります。細かく書く必要はなく、大まかな出来事を箇条書きにするだけで十分です。

  • POINT 4

    考えている様子

    お考えの整理

    相談をスムーズに進めるために、「自分はどうしたいのか」を整理しておきましょう。望む結果が明確だと、弁護士もそれに合わせて具体的なアドバイスがしやすくなります。