未払い残業代の時効は3年?5年?いつから請求できるか、時効の起算点と請求方法を弁護士が徹底解説

未払い残業代の時効は、原則3年です。時効のカウントは給料日の翌日から始まり、内容証明郵便を送れば、時効の完成を6ヶ月間猶予することができます。請求にはタイムカードなどの残業を客観的に証明できる証拠が重要で、会社との交渉から労働審判、訴訟まで段階的な手続きがあります。時効が迫っている場合は、早めに弁護士への相談がおすすめです。

未払い残業代の時効は原則3年!2020年の法改正で何が変わった?
未払い残業代を請求できる期間について、正確な情報を知ることが権利を守る第一歩です。2020年の法改正により、労働者にとって有利な変更がありました。
法改正により時効は2年から3年に延長された
2020年4月1日に施行された改正労働基準法により、未払い残業代の時効は従来の2年から3年に延長されました。この改正は、民法の債権時効が原則5年とされたことを受けて、労働者の権利をより手厚く保護するために実施されたものです。
重要なポイントは、この3年の時効が適用されるのは2020年4月1日以降に支払日が到来する残業代という点です。それ以前の残業代については旧法の2年が適用されるため、請求を検討している方は注意が必要です。たとえば、2024年10月現在であれば、2021年10月以降の給料日分の残業代が請求可能となります。
将来的には5年になる?経過措置の現状
実は改正労働基準法では、賃金請求権の時効は原則5年と定められています。しかし「当分の間は3年」という経過措置が設けられているのが現状です。
この措置は、企業の実務的な負担を考慮したもので、給与計算システムの変更や賃金台帳の保存期間延長など、企業側の準備期間を設けるためです。2025年4月以降に見直しが検討される予定となっており、その時点で5年への完全移行が実現する可能性があります。今後の動向を注視しながら、現時点では3年という期限を意識して行動することが大切です。
退職金や付加金は時効期間が異なる
残業代以外の請求権については、それぞれ異なる時効期間が設定されています。特に注意すべきは以下の3つです。
退職金の時効は5年と、残業代より長く設定されています。これは退職金が長期勤続に対する功労報償的な性格を持つためです。一方、悪質な未払いに対するペナルティである付加金の時効は3年で、残業代と同じ期間となっています。付加金は裁判で認められれば、未払い残業代と同額を上限として追加で支払われる可能性があります。
また、在職中と退職後では遅延損害金の利率が異なり、在職中は年3%程度ですが、退職後は年14.6%という高い利率で請求できます。これらの違いを理解して、最大限の権利を主張することが重要です。
時効の起算点はいつから?給料日の翌日が重要な理由
時効期間が3年とわかっても、いつから数えるのかを間違えると請求できる期間を誤ってしまいます。起算点の考え方を正確に理解しましょう。
時効のカウントは「給料日の翌日」から始まる
未払い残業代の時効は、その残業代が支払われるべきだった給料日の翌日から始まります。なぜ給料日当日ではないかというと、民法の「初日不算入の原則」により、期間計算の初日は含めないルールがあるためです。
たとえば、毎月25日が給料日の会社で4月分の残業代が未払いの場合、5月25日が本来の支払日となり、時効は5月26日からカウント開始です。締め日ではなく支払日が基準という点は特に間違えやすいので注意が必要です。この起算点を正しく把握することで、請求可能な残業代の範囲を正確に判断できます。
自分の残業代がいつまで請求できるか確認する方法
実際に自分のケースに当てはめて確認してみましょう。2025年10月15日現在を例に計算方法を説明します。
まず、お手元の給与明細や就業規則で締め日と支払日を確認してください。末日締め・翌月25日払いの場合、2022年9月分(10月25日支払)以降が請求可能です。一方、15日締め・当月25日払いの場合は、2022年9月16日〜10月15日分(10月25日支払)以降となります。
このように給与体系によって請求できる範囲が変わるため、正確な把握が必要です。計算が複雑に感じる場合は、弁護士の無料相談を活用して、具体的な請求可能期間を確認することをおすすめします。
時効完成前に行動することの重要性
時効が完成してしまうと、原則として請求権は消滅します。会社が時効を主張(援用)した場合、裁判でも勝つことは極めて困難です。
ただし、会社がタイムカードを改ざんしたり、残業代請求を妨害したりした悪質なケースでは、時効の主張が「権利の濫用」として認められない可能性もあります。とはいえ、これは例外的なケースです。時効完成前に確実に行動を起こすことが、あなたの権利を守る最適な方法です。日々時効は進行していることを意識し、早めの行動を心がけましょう。
時効を止める方法はある?完成猶予と更新の具体的な手続き
時効が迫っている場合でも、適切な手続きを取れば時効の進行を止めることができます。具体的な方法を理解して、戦略的に活用しましょう。
催告で6ヶ月間時効を止める「完成猶予」
最も手軽に時効を止める方法が、内容証明郵便による催告です。これにより6ヶ月間、時効の完成が猶予されます。
内容証明郵便は、郵便局が文書の内容と送付日を証明してくれるサービスです。会社に「未払い残業代を支払ってください」という請求書を送ることで、法的に時効のカウントダウンが一時停止します。この6ヶ月の間に、証拠を整理したり、会社と交渉したり、次の法的手段の準備を進めることができます。
ただし、催告による猶予は1回しか使えないため、計画的に活用する必要があります。内容証明には、書式や細かいルールがあるため、弁護士に作成を依頼すると安心です。
会社が債務を認めれば時効がリセットされる「更新」
時効の更新は、それまでの時効期間を完全にゼロにリセットする強力な手続きです。最も典型的なのは、会社が支払い義務を認める「債務の承認」です。
たとえば会社が「未払い分があることは認識しています」と回答したり、未払い分の一部でも支払ってきた場合、それは債務承認となり、その時点から新たに3年の時効がスタートします。交渉の際は、会社の発言を録音したり、書面で残したりすることで、債務承認の証拠を確保することが重要です。
労働審判や訴訟による時効の完成猶予と更新
法的手続きを開始することでも、時効を止めることができます。労働審判の申立てや訴訟の提起により、手続き中は時効の完成が猶予されます。
さらに、判決や審判で権利が確定すれば時効は更新され、判決確定から新たに10年の時効期間がスタートします。これにより、時効を気にせずじっくりと回収活動に取り組めます。ただし、法的手続きは専門知識が必要なため、弁護士のサポートを受けることにより成功が期待できます。
未払い残業代を請求する4つのステップ
実際に請求する際は、段階的なアプローチが効果的です。各ステップのポイントを押さえて、戦略的に進めましょう。
ステップ1:証拠を集めて残業代を計算する
請求の成否は証拠の質と量で決まるといっても過言ではありません。まずは手元にある証拠を整理しましょう。
最も有力な証拠は、タイムカードや勤怠管理システムのデータです。これらがない場合でも、PCのログデータ、業務メール履歴、手書きの勤務記録、交通系ICカードの履歴なども活用できる可能性があります。証拠が手元にない場合は、弁護士を通じて会社に開示請求することも可能です。
証拠が集まったら、1時間あたりの基礎賃金を算出し、法定の割増率を適用して残業代を計算します。計算は複雑なため、間違いを避けるためにも法律の専門家への相談がおすすめです。
ステップ2:内容証明郵便で会社と交渉する
計算が終わったら、内容証明郵便で請求書を送付し、会社との交渉を開始します。これにより時効も一時的に止まります。
内容証明は「請求の意思を明確に伝える」効果があり、会社側も無視しづらくなります。この段階で弁護士が代理人として交渉すれば、より有利な条件での解決が期待できます。交渉で合意に至った場合は、必ず合意書を作成し、支払額や支払日を明記しましょう。
ステップ3:労働基準監督署への申告
会社が交渉に応じない場合は、労働基準監督署(労基署)への申告を検討します。労基署は無料で相談でき、法律違反が確認されれば是正勧告を出してくれます。
ただし、労基署は中立的な立場で指導する機関であり、個人の代理人ではありません。是正勧告に強制力はないため、会社が従わない場合は次のステップに進む必要があります。それでも、行政からの指導は会社にとってプレッシャーとなるため、解決の糸口になることも多いです。
ステップ4:労働審判や訴訟で法的解決を図る
最終手段として、労働審判や訴訟といった法的手続きがあります。労働審判は原則3回以内の期日で終了し、2〜3ヶ月程度で解決することが多いため、まずはこちらを選択するケースが一般的です。
労働審判でも解決しない場合は訴訟となりますが、判決には強制力があるため、会社が支払いを拒否しても財産の差し押さえが可能です。ただし、訴訟は1年以上かかることも多く、弁護士にサポートしてもらうことが最適です。費用対効果を考慮しながら、最適な手段を選択することが重要です。
よくある質問
退職後でも残業代は請求できますか?
退職後でも問題なく請求できます。未払い残業代の請求権は、退職によって消滅することはありません。
重要なのは会社に在籍しているかどうかではなく、時効期間内(原則3年)かどうかです。実際、在職中は会社との関係を気にして請求をためらい、退職後に請求する方が多数います。退職後は遅延損害金の利率が年14.6%と高くなるメリットもあります。時効が完成していなければ、遠慮なく請求しましょう。
固定残業代制でも追加の残業代は請求できますか?
固定残業時間を超えた分は請求可能です。固定残業代制(みなし残業代制)は、あらかじめ定められた時間分の残業代を固定で支払う制度です。
しかし、実際の残業時間が固定残業時間を超えた場合、その超過分は別途支払う義務が会社にあります。たとえば、固定残業時間が月30時間で、実際に50時間残業した場合、20時間分は追加で請求できます。また、固定残業代制自体が違法に運用されているケースも多いため、諦めずに法律の専門家に相談することをおすすめします。
残業代を請求したら会社から報復されませんか?
残業代請求を理由とした不利益な扱いは違法です。正当な権利行使に対して、解雇や減給、不当な配置転換などの報復行為を行うことは労働基準法で禁止されています。
万が一、そのような扱いを受けた場合は、残業代とは別に損害賠償を請求することも可能です。また、弁護士が代理人として交渉すれば、会社も法的リスクを認識し、適切な対応を取らざるを得なくなります。権利を守るためにも、遠慮せずに行動することが大切です。
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