誹謗中傷の開示請求費用はいくら?弁護士費用の目安と費用倒れのリスクを解説
誹謗中傷の開示請求にかかる費用は、弁護士に依頼すると総額50~100万円程度が目安です。内訳は着手金20~30万円、成功報酬20~30万円、裁判所への実費数万円となります。費用倒れのリスクはありますが、最近は開示請求の弁護士費用を相手に一部または全部負担させる判例が増えており、被害者の負担は軽減傾向にあります。
インターネット上での誹謗中傷被害に遭った際、投稿者を特定して責任を追及したいと考えるのは当然のことです。しかし「費用がいくらかかるのか」「費用倒れにならないか」という不安から、一歩踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、開示請求にかかる具体的な費用の内訳から、費用倒れのリスク、さらに相手への費用請求の可能性まで、お金に関する疑問に詳しくお答えします。
誹謗中傷の開示請求費用はいくら?総額目安と内訳を解説
誹謗中傷の投稿者を特定するための発信者情報開示請求には、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。弁護士に依頼する場合と自分で手続きする場合、それぞれの費用目安と内訳を詳しく見ていきましょう。
弁護士に依頼した場合の費用総額は50~100万円
弁護士に開示請求を依頼する場合、費用の総額は50万円から100万円程度が一般的な相場となっています。
この金額に幅があるのは、誹謗中傷が投稿されたサイトの種類等によって手続きの難易度が変わるためです。
弁護士費用の内訳は以下の通りです。
| 費用項目 | 金額の目安 | 説明 |
|---|---|---|
| 相談料 | 30分5,000円~1万円 | 初回無料の事務所も多い |
| 着手金 | 20万円~30万円 | 依頼時に支払う。結果にかかわらず返金されない |
| 成功報酬 | 20万円~30万円 | 投稿者の特定に成功した場合に支払う |
| 実費 | 数万円~30万円 | 裁判所への印紙代、郵便代、担保金など |
なお、2022年10月に施行された改正プロバイダ責任制限法により、「発信者情報開示命令」という新しい手続きが導入されました。これにより従来よりも迅速かつ費用を抑えて手続きを進められるケースが多くなってきています。
自分で手続きする場合でも実費は必要
弁護士に依頼せずに自分で手続きを行う場合、弁護士費用はかかりませんが、裁判所に支払う実費として数万円から数十万円は必要になります。
主な実費の内訳は以下の通りです。
- 収入印紙代:2,000円~15,000円(申立ての種類により異なる)
- 郵便切手代:3,000円~6,000円(裁判所が書類送付に使用)
- 担保金:10万円~30万円(仮処分の場合。問題なければ全額返還される)
費用は大幅に抑えられますが、発信者情報開示請求は非常に専門的で複雑な手続きです。法律知識がないと書類作成や裁判所とのやり取りで時間がかかり、その間にプロバイダのログ保存期間(3~6ヶ月)が過ぎて証拠が消失するリスクがあることを理解しておく必要があります。
開示請求で費用倒れになるリスクはありますか?
高額な費用をかけて投稿者を特定しても、相手から十分な賠償金が取れなければ赤字になってしまう「費用倒れ」。この問題について、具体的なケースを交えながら解説します。
費用倒れとは何か、なぜ起こるのか
費用倒れとは、開示請求や損害賠償請求にかかった費用が、最終的に相手から回収できた金額を上回ってしまう状態を指します。
なぜ費用倒れが起こるのでしょうか。主な理由は、投稿者を特定するだけで数十万円の費用がかかる一方で、誹謗中傷に対する慰謝料相場が必ずしも高額ではないためです。このギャップが費用倒れのリスクを生み出しています。
投稿内容によって変わる慰謝料相場と費用倒れリスク
費用倒れになるかどうかは、投稿された内容の悪質性によって大きく左右されます。以下の表で、ケース別の慰謝料相場と費用倒れリスクを確認してみましょう。
| 投稿内容の種類 | 具体例 | 慰謝料相場 | 費用倒れリスク |
|---|---|---|---|
| 軽微な侮辱 | 「バカ」「キモい」など | 1万円~10万円 | 非常に高い |
| 深刻な名誉毀損 | 「不倫している」「前科者だ」など | 10万円~50万円 | 高い |
| 事業への悪影響 | 「あの店の食品は危険」など虚偽の口コミ | 50万円~100万円+経済的損失 | 比較的低い |
このように、単発の悪口程度では慰謝料が数万円にとどまり、ほぼ確実に費用倒れとなります。一方、具体的な虚偽の事実を広めて社会的評価を著しく低下させたり、企業の売上に直接的なダメージを与えたりするような悪質なケースでは、慰謝料が高額になる傾向があります。
金銭回収だけが目的ではない開示請求の意義
費用倒れのリスクがあるにもかかわらず、多くの被害者が開示請求に踏み切るのには理由があります。
開示請求の目的は金銭的な回収だけではありません。「誰が、なぜこんなことをしたのか」という真実を解明することで、精神的な苦痛から解放される方も多くいます。また、匿名の陰に隠れて無責任な発言をした加害者に責任を追及し謝罪を求めることや、二度と同様の行為をさせないための抑止力としても重要な意味を持ちます。
経済的な損得だけでなく、被害者の尊厳を回復し、ネット社会全体の健全化につながるという点で、費用をかけてでも戦う価値があると判断される方が多いのです。
開示請求の費用は相手に請求できますか?
開示請求にかかった費用を加害者に請求できれば、費用倒れのリスクは大きく軽減されます。ここでは、どの費用が請求可能なのか、最新の判例動向も含めて解説します。
裁判所への実費は請求可能、弁護士費用は原則不可
費用請求については、以下のような原則があります。
請求できる費用として、裁判所に納めた収入印紙代や郵便切手代などの訴訟費用(実費)があります。これらは訴訟で勝訴すれば、判決で相手方に負担を命じてもらうことができます。
一方、原則として請求できない費用は弁護士費用です。どの弁護士にいくらで依頼するかは当事者の自由な選択によるものなので、その費用を相手に負担させることは原則として認められていません。
弁護士費用も損害として認められる判例が増加中
しかし、この原則には重要な例外があります。
誹謗中傷のような不法行為によって損害を受けた場合、その損害を回復するためにかかった費用も損害の一部として相手に請求できる可能性があるのです。従来は、認められる弁護士費用は「慰謝料の1割程度」が相場でした。しかし、近年、「発信者情報開示請求にかかった弁護士費用は、損害賠償請求を行う上で必要不可欠な調査費用である」という判断を示す高裁判例が出たこともあり、開示請求にかかった弁護士費用の全額やそうでなくても1割を超える部分が損害として認められるケースが増えています。
相手に支払い能力がない場合の対処法
投稿者を特定し、損害賠償請求の裁判で勝訴しても、相手に支払い能力がなければ実際の回収は困難になります。
このような場合、給与や預金を差し押さえる「強制執行」や、相手の財産を開示させる「財産開示請求」といった法的手段を取ることができます。ただし、相手が無職で財産もない場合など、それでも回収できないリスクがあることは理解しておく必要があります。
よくある質問
誹謗中傷の開示請求費用に関して、よく寄せられる質問にお答えします。
お金がなくても開示請求はできますか?
経済的に厳しい場合でも、諦める必要はありません。
まず検討すべきは、法テラスの「民事法律扶助制度」です。収入などの条件を満たせば、弁護士費用を立て替えてもらい、月々5,000円~1万円程度の分割払いで返済することができます。
また、法律事務所によっては費用の分割払いや後払いに対応しているところもあります。多くの事務所が初回相談を無料で実施していますので、まずは相談して支払い方法について確認してみることをお勧めします。
開示請求にかかる期間はどれくらいですか?
投稿者を特定するまでの期間は、3ヶ月〜1年程度が一般的です。
従来の裁判手続きでは、サイト運営者とプロバイダそれぞれに対して別々の手続きが必要でした。しかし、2022年10月に導入された「発信者情報開示命令」制度により、手続きを一本化できるようになり、期間が短縮できるケースが増えています。
ただし、プロバイダのログ保存期間は3~6ヶ月程度なので、誹謗中傷を発見したらできるだけ早く弁護士に相談することが重要です。証拠保全のためのログ保存要請など、緊急の対応が必要な場合もあります。
費用を抑える方法はありますか?
開示請求の費用を抑える方法はいくつかあります。
最も効果的なのは、前述の法テラスの利用です。また、複数の投稿をまとめて開示請求することで、1件あたりの費用を抑えることも可能です。同一人物による複数の投稿がある場合は、まとめて手続きすることを検討しましょう。
さらに、弁護士事務所によって料金体系は異なるため、複数の事務所で見積もりを取って比較することも大切です。ただし、費用の安さだけでなく、インターネット投稿トラブルに関する実績や経験も重視して選ぶことが、結果的に成功率を高め、費用対効果を向上させることにつながります。
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