いらない家の相続で損しないための5つの処分方法
相続した実家を持て余して困っていませんか?いらない家を放置すると、固定資産税が最大6倍になるリスクや、倒壊による損害賠償責任が発生する可能性があります。最適な処分方法は、売却による現金化が現実的です。相続放棄、贈与、国庫帰属、賃貸活用という選択肢もありますが、それぞれメリット・デメリットがあるため、状況に応じた判断が必要です。
いらない家を相続したらどうなる?放置の4大リスク
相続した実家に住む予定がない場合、つい「とりあえず放置」という選択をしがちです。しかし、空き家の放置は想像以上に危険な選択となる可能性があります。
固定資産税が最大6倍になる「特定空き家」とは
2015年の空家等対策特別措置法により、管理不全な空き家は「特定空き家」に指定される制度が始まりました。通常、住宅が建つ土地には固定資産税の軽減特例がありますが、特定空き家に指定されると、この特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。
例えば、年間10万円だった固定資産税が60万円になることもあり、家計に大きな負担となります。さらに2023年からは、特定空き家の前段階である「管理不全空き家」という区分も新設され、より早い段階で行政指導が入るようになりました。自治体からの改善勧告を無視し続けると、最終的には行政代執行により強制的に解体され、その費用を請求されることもあります。
相続登記の義務化で10万円の過料リスク
2024年4月から不動産の相続登記が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
この制度は過去に相続した不動産にも適用されるため、「親の名義のままになっている」という方は要注意です。相続登記には戸籍謄本の収集や法務局での手続きが必要で、司法書士に依頼すると5万円から15万円程度の費用がかかります。しかし、放置による過料や、将来的な売却時のトラブルを考えれば、早めの対応が賢明です。
建物倒壊による損害賠償責任
老朽化した建物は、台風や地震で倒壊するリスクが高まります。建物が倒壊して隣家や通行人に被害を与えた場合、所有者であるあなたが損害賠償責任を負うことになります。実際に瓦が飛んで隣家の車を破損させたケースや、外壁が崩れて通行人がケガをしたケースでは、数百万円から数千万円の賠償金が発生しています。
火災のリスクも見逃せません。放置された空き家は放火のターゲットになりやすく、また電気系統の劣化による漏電火災の危険性もあります。火災が隣家に延焼した場合、重過失があれば賠償責任が発生し、億単位の賠償金を請求される可能性もあるのです。
いらない家を処分する5つの方法とは?
相続した家の処分方法は大きく5つあります。それぞれの特徴を理解し、あなたの状況に最適な方法を選ぶことが重要です。
相続放棄で全ての責任から解放される方法
相続放棄は、家庭裁判所に申述することで、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しない手続きです。亡くなった方に借金が多い場合や、不動産以外に価値のある財産がない場合に有効な選択肢となります。
手続きは相続開始を知った時から3ヶ月以内に行う必要があり、費用は自分で手続きする場合は数千円、司法書士に依頼する場合は3万円から10万円程度です。ただし、いらない不動産だけを選んで放棄することはできず、預貯金などのプラスの財産も全て手放すことになります。また、相続人全員が放棄しても、相続財産を現に占有している人に管理責任が残るという落とし穴があることも覚えておきましょう。
売却で現金化する3つのパターン
売却は一般的で現実的な処分方法です。売却には「古家付き土地」「更地」「買取」の3つのパターンがあり、それぞれに特徴があります。
古家付き土地として売る場合、解体費用をかけずに済むメリットがあります。買主の中にはリフォームを前提に購入する人もいるため、立地が良ければ意外と早く売れることもあります。ただし、売却価格は更地より安くなる傾向があり、契約不適合責任(売却後の欠陥に対する責任)のリスクもあるため、契約書で責任を免除する特約を付けることが重要です。
更地にして売る場合、買主が自由に建物を建てられるため買い手が付きやすく、古家付きより高く売れる可能性があります。しかし、解体費用が100万円から200万円程度かかることや、更地にすると固定資産税の特例が適用されなくなるデメリットもあります。
贈与・寄付・国庫帰属制度の現実
売却が難しい場合、他の選択肢として贈与、寄付、国庫帰属制度があります。しかし、これらには大きな制約があることを理解しておく必要があります。
親族や知人への贈与は、相手が了承すれば可能ですが、受け取った側に贈与税や不動産取得税がかかるため、相手の負担を考慮する必要があります。自治体への寄付は、ほとんどの場合受け付けてもらえません。利用価値の高い不動産でない限り、断られるのが現実です。2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度は、更地であることや境界が明確であることなど厳しい条件があり、さらに20万円以上の負担金が必要になります。
いらない家の相続でかかる費用はどれくらい?
処分方法によって必要な費用は大きく異なります。具体的な数字を把握することで、最適な選択ができるようになります。
処分方法別の費用シミュレーション
地方都市の築40年、土地40坪、建物30坪の実家を例に、各処分方法の費用を比較してみます。
相続放棄の場合、初期費用は専門家への依頼料を含めて5万円程度で済みます。その後の維持費もかかりません。ただし、管理責任が残る可能性があることに注意が必要です。
古家付きで売却する場合、仲介手数料などの諸費用で売却価格の約5%(10万円から15万円程度)がかかります。売却価格を200万円と仮定すると、手元には185万円程度残ります。
更地にして売却する場合、解体費用120万円と売却諸費用20万円で合計140万円の初期費用が必要です。売却価格300万円なら、手元には160万円程度残る計算になります。
5年間放置した場合、固定資産税が年10万円、最低限の管理費が年5万円として、5年間で75万円の支出となります。特定空き家に指定されれば、さらに税金が増える可能性があります。
売却時の税金と特別控除
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所得税と住民税がかかります。税率は所有期間5年以下なら約39%、5年超なら約20%です。
しかし、相続した空き家の売却には「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」という強力な節税制度があります。この特例を使えば、売却益が3,000万円までなら税金がかかりません。適用には、相続開始から3年以内の売却、昭和56年5月31日以前の建築、売却価格1億円以下などの要件があります。事前に税理士に相談し、要件を満たすか確認することが重要です。
相続登記や専門家費用の相場
相続した家を処分する際には、さまざまな手続きで専門家の力を借りることになります。相続登記を司法書士に依頼すると5万円から15万円、相続放棄の手続きは3万円から10万円が相場です。
不動産の査定は多くの会社が無料で行っていますが、売却時の仲介手数料は売却価格の3%+6万円(税別)が上限(※)となっています。弁護士に遺産分割の交渉を依頼する場合は、着手金20万円から30万円、成功報酬として経済的利益の10%程度が一般的です。
※売却価格800万円以下の場合、仲介手数料上限は30万円(税別)となります
よくある質問
いらない家の相続について、多くの方が抱える疑問にお答えします。
相続放棄すれば管理責任もなくなりますか?
相続放棄をしても、次の管理者が決まるまでは管理責任が残る場合があります。民法では、相続人全員が相続放棄した場合、相続財産を現に占有している人に「保存義務」があると定められています。
この責任から完全に解放されるためには、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる必要があります。ただし、この手続きには数十万円から100万円程度の予納金が必要になるケースが多く、簡単ではありません。そのため、借金がない限り、相続放棄よりも売却を検討する方が現実的といえるでしょう。
売れない田舎の家はどうすればいいですか?
まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、本当に売れないのか確認することが大切です。地元の不動産会社なら、都市部の会社では分からない需要を把握している可能性があります。
それでも売却が難しい場合は、解体して更地にすることで売れやすくなることもあります。自治体によっては解体費用の補助金制度もあるので確認してみましょう。また、空き家バンクへの登録や、隣地の所有者への売却打診も選択肢になります。最終手段として、不動産会社の買取なら、仲介よりも価格は安くなりますが手放せる可能性があります。。
兄弟で意見が合わない場合の対処法は?
まずは冷静に話し合い、それぞれの希望や事情を共有することから始めましょう。感情的にならず、放置のリスクや各選択肢のメリット・デメリットを数字で示すことが重要です。
話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停を利用する方法があります。調停委員が間に入って話し合いを進めてくれるため、直接対立することなく解決を図れます。それでもまとまらない場合は審判となり、裁判官が判断を下します。ただし、時間と費用がかかるため、できるだけ話し合いでの解決を目指すことをおすすめします。
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