相続登記は自分でできる?費用・手順・必要書類を徹底解説

相続登記を自分で行うことは、相続人が少なく関係が良好で、平日に時間が取れる場合は十分可能です。費用は登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)と書類取得費用の実費のみ約10万円程度で済み、司法書士に依頼する場合と比べて5~15万円の節約できる可能性もあります。ただし、数次相続や相続人間のトラブルがある場合は法律の専門家への依頼が賢明です。

相続登記は自分でできる?できない?判断基準と費用相場

相続登記を自分で行うかどうかは、相続の状況と費用面から総合的に判断することが大切です。まずはご自身のケースがどちらに当てはまるか、具体的な基準を確認してみましょう。

自分で手続きできるケースの3つの条件

自分で相続登記ができるかどうかは、以下の3つの条件で判断できます。

1つ目は相続人の人数と関係性です。相続人が配偶者と子のみ、または子1人のみなど全員と円満に連絡が取れる状態であることが重要です。相続人同士で遺産の分け方について合意ができていれば、手続きはスムーズに進められます。

2つ目は書類収集の難易度です。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を集める必要がありますが、転籍が少なく本籍地の移動が2~3回程度であれば、個人でも十分対応可能です。3つ目は時間の確保です。役所や法務局は平日しか開いていないため、月に2~3日程度は平日に時間を確保できることが条件となります。書類の収集から申請まで、トータルで1~2ヶ月程度かかることを想定しておきましょう。

法律の専門家に依頼すべき複雑なケースとは?

一方で、以下のようなケースでは手続きが複雑になるため、司法書士への依頼を検討したほうがいいでしょう。

数次相続が発生している場合は特に注意が必要です。例えば、祖父名義のままの不動産を父が相続し、その父も亡くなったようなケースでは、2回分の相続手続きを同時に進める必要があります。必要書類が膨大になり、相続人の確定も複雑になるため、専門知識なしでは対応が困難です。

相続人に特別な事情がある場合も法律の専門家の力が必要です。相続人の中に未成年者、認知症の方、行方不明者がいる場合は、家庭裁判所での特別代理人選任や不在者財産管理人の申立てなど、追加の法的手続きが必要になります。

相続財産に問題がある場合も要注意です。未登記の建物が含まれていたり、農地の相続で農地法の許可が必要だったりする場合は、相続登記以外の手続きも必要になるため、総合的な対応ができる法律の専門家に依頼することをお勧めします。

相続登記の義務化で何が変わった?期限と罰則を解説

2024年4月1日から相続登記が義務化され、これまで任意だった手続きが法的義務になりました。この変更により、不動産を相続したすべての方に影響があります。具体的にどのような義務が課され、どんな罰則があるのか詳しく見ていきましょう。

3年以内に登記しないと10万円以下の過料

相続登記の義務化により、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければなりません。この期限を守らないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

過料は刑事罰ではなく行政上のペナルティですが、裁判所から支払い命令が出されます。無視すると最終的に財産の差し押さえもありえるため、決して軽視できません。ただし、すぐに過料が科されるわけではなく、法務局から登記を促す通知が届き、それでも応じない場合に過料の対象となります。

正当な理由がある場合は過料の対象外となります。例えば、相続人が多数で戸籍収集に時間がかかっている、遺産分割協議が難航している、相続人の中に重病人がいて手続きが進められないなどの事情があれば、法務局に相談することで配慮してもらえる可能性があります。

過去の相続も対象?2027年3月末までの猶予期間

「10年前に父が亡くなったけど、まだ祖父の名義のまま…」という方も多いのではないでしょうか。2024年4月1日より前に発生した相続も義務化の対象となりますが、猶予期間が設けられています。

具体的には、2027年3月31日までに登記申請をすれば過料の対象にはなりません。つまり、過去の相続については約3年間の猶予があるということです。この期間内に、放置していた相続登記をまとめて済ませる必要があります。

ただし、数次相続が発生している場合は手続きが複雑になるため、早めに着手することをお勧めします。世代を超えて相続が発生していると、必要な戸籍も膨大になり、相続人の確定だけで数ヶ月かかることもあります。

相続人申告登記制度で一時的に義務を果たす方法

遺産分割協議がまとまらない、相続人の一部と連絡が取れないなど、3年以内に正式な相続登記ができない場合は、**「相続人申告登記」**という新しい制度を利用できます。

この制度は、自分が相続人の一人であることを法務局に申し出ることで、一時的に相続登記の義務を果たしたとみなされる簡易的な手続きです。必要書類も少なく、申請者の戸籍謄本と被相続人の死亡が分かる戸籍謄本があれば申請できます。戸籍謄本を取得する費用はかかりますが手続き自体は無料で、オンライン申請も可能です。

ただし、重要な注意点があります。相続人申告登記は所有権の移転を伴わないため、不動産の売却や担保設定はできません。また、遺産分割が成立したら、その日から3年以内に正式な相続登記が必要になります。あくまで一時的な措置として利用し、できるだけ早く正式な手続きを進めることが大切です。

自分で相続登記する手順は?必要書類から申請まで

実際に自分で相続登記を行う場合の具体的な手順を解説します。必要書類の収集から登記申請まで、各ステップでつまずきやすいポイントと対策も含めて詳しく説明していきます。

ステップ1|必要書類を漏れなく集める方法

相続登記で最も時間がかかるのが書類収集です。特に重要な書類と取得方法を整理しました。

被相続人(亡くなった方)の書類で最も重要なのが、出生から死亡までの連続した戸籍謄本です。これは相続人を確定するために必須で、本籍地を転々としている場合は、各市区町村に請求する必要があります。2024年3月から始まった戸籍の広域交付制度を利用すれば、最寄りの役所でまとめて取得できる場合もありますが、コンピューター化されていない古い戸籍は対象外のため注意が必要です。

相続人全員分の書類も必要です。現在の戸籍謄本は相続人が生存していることを証明するため、被相続人の死亡日以降に発行されたものが必要です。また、遺産分割協議書に押印する印鑑証明書は相続人全員分が必要で、不動産を取得する人の住民票も必要になります。

不動産関連の書類として固定資産評価証明書は必須です。これは登録免許税の計算に使用するもので、申請する年度のものでなければなりません。4月1日を境に年度が変わるため、3月末から4月初めに申請する場合は特に注意しましょう。

ステップ2|登記申請書と遺産分割協議書の作成

書類が揃ったら、登記申請書と遺産分割協議書を作成します。これらの書類は一字一句の正確性が求められるため、慎重に作成する必要があります。

登記申請書は法務局のホームページからダウンロードできるひな形を使用します。最も間違いやすいのが不動産の表示部分で、登記簿謄本に記載されている通りに一字一句正確に転記することが重要です。「一丁目」を「1丁目」と書いただけでも不備になることがあります。

遺産分割協議書には決まった形式はありませんが、必須項目があります。被相続人の情報(氏名、死亡日、最後の住所)、相続人全員で協議した旨、不動産の表示(登記簿通り)、誰がどの不動産を相続するか、そして相続人全員の署名と実印での押印が必要です。複数ページになる場合は、ページ間に全員の実印で**契印(割印)**を押すことを忘れないでください。

相続関係説明図を作成すると戸籍謄本の原本を返却してもらえます。これは家系図のようなもので、被相続人と相続人の関係を図示したものです。手書きでもパソコン作成でも構いませんが、氏名や生年月日は戸籍謄本通りに正確に記載する必要があります。

ステップ3|法務局への申請と登記完了までの流れ

書類の準備ができたら、いよいよ法務局に申請します。申請方法は3つありますが、それぞれメリット・デメリットがあります。

窓口申請は最も確実な方法です。その場で書類をチェックしてもらえるため、軽微な不備であればその場で修正できます。収入印紙も法務局内で購入できることが多く、初めての方には安心です。ただし、平日の開庁時間内に行く必要があり、混雑時は長時間待つこともあります。

郵送申請は遠方の不動産を相続する場合に便利です。申請書類一式と返信用封筒を同封し、書留郵便またはレターパックプラスで送付します。返信用封筒には本人限定受取郵便分の切手を貼る必要があります。一度も法務局に行かずに手続きを完了できますが、不備があった場合の対応に時間がかかることがあります。

申請後は1~2週間で登記が完了します。不備があった場合は法務局から電話で連絡があり、これを「補正」といいます。軽微な修正であれば電話での指示で対応できますが、場合によっては法務局に出向く必要があります。登記が完了すると、登記識別情報通知(新しい権利証)と登記完了証が交付されます。

相続登記でよくある失敗は?回避方法と対策

自分で相続登記に挑戦した人が実際につまずきやすいポイントを、具体的な対策とともに解説します。これらの失敗例を事前に知っておくことで、スムーズな手続きが可能になります。

戸籍収集で行き詰まる原因と解決策

相続登記で最初につまずくのが戸籍収集です。特に被相続人が高齢の場合、様々な困難に直面します。

最大の難関は古い戸籍(改製原戸籍)の判読です。昭和初期以前の戸籍は手書きで、旧字体や達筆な文字で書かれているため、何が書いてあるか分からないことがよくあります。また、戦災で焼失した戸籍もあり、完全に揃えられないケースもあります。対策として、市区町村役場の窓口で相談すると、職員が読み方を教えてくれたり、次の本籍地を探す手伝いをしてくれたりします。

転籍を繰り返している場合も大変です。仕事の都合で全国を転々としていた方の場合、10カ所以上の役所から戸籍を取り寄せる必要があることもあります。郵送請求する場合は、定額小為替の購入や返信用封筒の準備など、意外と手間がかかります。効率的に進めるには、まず最後の本籍地で「どこから転籍してきたか」を確認し、順番に遡っていくことがポイントです。

申請書の記載ミスを防ぐチェックポイント

登記申請書の記載ミスは、補正や取下げの原因となる最も多い失敗です。特に注意すべきポイントを押さえておきましょう。

不動産の表示は一字一句正確に記載する必要があります。よくあるミスは、マンション名を省略したり、「番地」を「番」と書いたり、「1丁目1番地」を「1-1」と記載したりすることです。必ず登記簿謄本(登記事項証明書)を取得し、そこに記載されている通りに転記してください。手書きではなく、パソコンで作成してコピー&ペーストすることで、ミスを減らせます。

登録免許税の計算ミスも要注意です。固定資産税評価額の1,000円未満を切り捨てることや、計算結果の100円未満を切り捨てることを忘れがちです。また、土地と建物を別々に計算してしまい、合算し忘れることもあります。電卓で2回計算し、金額が一致することを確認してから記載しましょう。

押印漏れや押印箇所の間違いも多い失敗です。登記申請書には認印で構いませんが、押し忘れがないか確認が必要です。また、捨印を押しておくことで、軽微な修正に対応できます。遺産分割協議書は実印での押印が必須で、契印も忘れずに押す必要があります。

共有名義にする場合の注意点と将来リスク

兄弟姉妹で実家を相続する場合、公平性を重視して共有名義にすることがありますが、これには大きなリスクが潜んでいます。

共有名義の最大の問題は、将来的な処分の困難さです。不動産を売却する場合、リフォームする場合、賃貸に出す場合など、共有者全員の同意が必要になります。一人でも反対すれば何もできません。時間が経つにつれて、お互いの生活状況や考え方が変わり、意見が合わなくなることは珍しくありません。

さらに深刻なのは、次の世代への影響です。共有者の一人が亡くなると、その持分は相続人に引き継がれます。例えば、兄弟2人の共有だったものが、次の世代では4人、6人と増えていき、最終的には何十人もの共有になることもあります。こうなると、全員の同意を得ることは事実上不可能になり、不動産が塩漬け状態になってしまいます。

対策として、できるだけ単独名義にすることをお勧めします。どうしても共有にする場合は、将来の売却時期や方法について書面で取り決めを作っておくことや、共有物分割請求などの法的手段があることを理解しておくことが重要です。

よくある質問

相続登記を自分で行うことを検討している方から寄せられる、具体的な質問にお答えします。

相続登記にかかる期間はどのくらいですか?

書類収集から登記完了まで、順調に進んで1~2ヶ月程度が目安です。

戸籍謄本の収集に2~3週間、遺産分割協議と書類作成に1~2週間、法務局での審査に1~2週間かかるのが一般的です。ただし、相続人が多く遺産分割協議が長引く場合や、、古い戸籍の取得に手間取る場合は、3ヶ月以上かかることもあります。特に郵送で戸籍を請求する場合は、1つの役所につき1~2週間かかるため、転籍が多い場合は早めに着手することが大切です。

法務局の無料相談は本当に役立ちますか?

書類の書き方や手続きの流れを確認するには非常に有効です。

法務局の無料相談(登記手続案内)は、作成した書類のチェックや、不明点の確認に最適です。ただし、1回20分程度の完全予約制で、法律相談はできません。効果的に利用するには、事前に書類を作成し、具体的な質問を用意していくことがポイントです。「この申請書の書き方で合っていますか」「登録免許税の計算は正しいですか」など、具体的に聞くことで的確なアドバイスがもらえます。

司法書士に部分的に依頼することは可能ですか?

書類収集だけ、申請書作成だけなど、部分的な依頼も可能です。

すべてを自分でやるか、全部任せるかの二択ではありません。例えば、時間のかかる戸籍収集だけを依頼して費用を抑えることもできます。また、書類はすべて自分で集めて、申請書の作成と提出だけを依頼することも可能です。部分的な依頼の場合、フルサポートより報酬は安くなりますが、事務所によって対応が異なるため、事前に確認が必要です。自分でできる部分は自分で行い、難しい部分だけ法律の専門家に任せるという選択肢も検討してみてください。

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不安がある方へ

弁護士、専門家へのご相談のご経験があるかはそこまで多くないと思います。ちょっとしたポイントを抑えていただくだけで、ご自身のお悩みの解決方法が見つかりやすいことがあります。ご不安を感じられる方はぜひ、このポイントを抑えたうえでご相談ください。

  • POINT 1

    相談をオンラインでしている様子

    早めのご相談

    「まだ大丈夫」と思っていても、早めに相談することで安心につながります。弁護士は身近な相談相手として、問題が大きくなる前の解決をサポートしてくれます。

  • POINT 2

    書類のイメージ

    書類や文書の整理

    相談には契約書や領収書、メモなど関係しそうな資料をできるだけ整理しましょう。自分では些細に思えても、弁護士にとっては大切な手がかりになることがあります。

  • POINT 3

    時系列を整理している様子

    時系列の確認

    問題の流れを日付順に整理してメモしておくと、弁護士が状況を理解しやすくなります。細かく書く必要はなく、大まかな出来事を箇条書きにするだけで十分です。

  • POINT 4

    考えている様子

    お考えの整理

    相談をスムーズに進めるために、「自分はどうしたいのか」を整理しておきましょう。望む結果が明確だと、弁護士もそれに合わせて具体的なアドバイスがしやすくなります。