誹謗中傷の事例から学ぶ加害者・被害者にならないための対処法

誹謗中傷は芸能人だけでなく、学生や一般人も巻き込まれる深刻な問題です。SNSでの軽い一言が名誉毀損罪や侮辱罪となり、最大3年の拘禁刑や50万円の罰金につながることもあります。被害に遭った場合は、まず証拠を保存し、警察や弁護士に相談することが重要です。

誹謗中傷の具体的な事例とは?実際に起きた4つのパターン

インターネット上の誹謗中傷は、誰もが被害者にも加害者にもなりうる身近な問題です。ここでは実際に起きた事例を4つのカテゴリーに分けて紹介します。

芸能人・有名人への誹謗中傷事例

2020年に起きた女子プロレスラー・木村花さんの事件は、SNS上の誹謗中傷の危険性を社会に知らしめました。リアリティ番組での言動をきっかけに、彼女は数百件を超える心ない言葉をSNSで浴びせられ、最終的に自ら命を絶つという痛ましい結果となりました。この事件は侮辱罪の厳罰化につながり、法定刑が「1年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金」へと引き上げられました。

お笑い芸人のスマイリーキクチさんは、「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人というデマを20年以上も拡散され続けました。全く事実無根の情報にもかかわらず、殺害予告や脅迫を受け、芸能活動に深刻な影響が出ました。川崎希さんや堀ちえみさんも同様に、執拗な誹謗中傷を受けて加害者を特定し、法的措置を取っています。

学生間のSNSトラブル事例

中高生の間では、LINEやX(旧Twitter)での誹謗中傷が急増しています。グループLINEで特定の友人の悪口を共有したり、本人の許可なく撮影した写真をSNSに投稿したりする行為は、いじめや不登校の原因となっています。

愛媛県警が公開した事例では、SNSでの悪口がエスカレートし、個人情報の特定から脅迫へと発展しました。他人のアカウントになりすまして不適切な投稿をするケースも報告されており、被害者は退学や精神的疾患に追い込まれることもあります。「匿名だからバレない」という安易な考えが、取り返しのつかない事態を招くのです。

企業への風評被害事例

飲食店への「異物混入」というデマや、「ブラック企業」という根拠のない書き込みは、企業に深刻なダメージを与えます。特に元従業員による腹いせの投稿は、企業の信用を失墜させ、時には経営破綻にまで追い込むことがあります。

「バイトテロ」と呼ばれる従業員の不適切動画も大きな問題です。コンビニや飲食店での悪ふざけ動画がSNSで拡散され、その店舗が閉店に追い込まれた例もあります。こうした行為は偽計業務妨害罪に問われ、損害賠償請求の対象となります。

誹謗中傷はどこから犯罪?名誉毀損罪と侮辱罪の違い

ネット上での批判や悪口が、どこから法的責任を問われるのか、その境界線を理解することは非常に重要です。主に「名誉毀損罪」と「侮辱罪」の2つが問題となります。

名誉毀損罪が成立する条件と具体例

名誉毀損罪は、具体的な事実を挙げて人の社会的評価を下げる行為が対象となります。例えば「Aさんは部下と不倫している」「B店の店長は過去に自己破産したことがある」といった投稿です。重要なのは、その内容が真実であっても罪に問われる可能性があるという点です。

成立要件は、①公然と(不特定多数が認識できる状況で)、②事実を摘示し、③人の社会的評価を下げること、の3つです。法定刑は「3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金」となっており、民事での損害賠償請求も可能です。ただし、公共の利害に関わり、公益を図る目的で、真実であることが証明された場合は例外的に違法性が阻却されることもあります。

侮辱罪が成立する条件と2022年の法改正

侮辱罪は、事実を挙げずに相手を侮辱する行為が対象です。「バカ」「死ね」「無能」といった抽象的な悪口が該当します。名誉毀損罪と比べて成立のハードルは低いものの、2022年の法改正前までは刑罰も軽いものでした。

木村花さんの事件を受けて行われた法改正により、従来の「拘留または科料」に加えて、「1年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金」が追加されました。これにより、SNS上での安易な侮辱的投稿への抑止力が強化されています。匿名での投稿も発信者情報開示請求により特定可能であることを認識しておく必要があります。

その他の関連犯罪(脅迫罪・業務妨害罪)

誹謗中傷の内容によっては、他の犯罪も成立します。「殺すぞ」「家族に危害を加える」といった投稿は脅迫罪(2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)に該当します。企業に対するデマで営業を妨害した場合は、偽計業務妨害罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)に問われます。

執拗なDM送信や大量の批判コメント投稿は、各自治体の迷惑防止条例違反となることもあります。誹謗中傷は単なる「悪口」では済まされない、様々な犯罪に結びつく危険な行為であることを理解しておきましょう。

誹謗中傷の被害に遭ったらどうする?具体的な対処法と費用

誹謗中傷の被害に遭った際は、感情的にならず冷静に対処することが重要です。ここでは証拠保存から法的措置まで、具体的な対処法を解説します。

証拠保存の方法と相談窓口

被害に遭ったら、まず証拠の保存が最優先です。問題の投稿は簡単に削除される可能性があるため、以下の情報を含めてスクリーンショットを撮影してください。

  • 誹謗中傷の投稿内容
  • ページのURL(アドレス)
  • 投稿日時
  • 投稿者のアカウント名やID

スマートフォンではなくパソコンでの撮影が確実です。URLが全て表示されるように撮影し、複数枚に分けても構いません。証拠保存後は、警察のサイバー犯罪相談窓口、法務省のインターネット人権相談受付窓口、または弁護士に相談しましょう。緊急性が高い場合は迷わず110番通報してください。

発信者情報開示請求の流れ

匿名の投稿者を特定するには、発信者情報開示請求という法的手続きが必要です。2022年の改正プロバイダ責任制限法により、従来より迅速な手続きが可能になりました。

手続きの流れは、①サイト管理者へのIPアドレス開示請求、②プロバイダへの契約者情報開示請求、③加害者への損害賠償請求、という3段階です。以前は2回の裁判が必要でしたが、法改正により一度の手続きで完了できるようになりました。ただし、これらの手続きは専門的な知識が必要なため、ネット投稿トラブルに強い弁護士への依頼が不可欠です。

弁護士費用と慰謝料の相場

法的措置にかかる費用は、発信者情報開示請求で着手金20~30万円、報酬金15~30万円が目安です。損害賠償請求は着手金10~20万円程度に加え、獲得額の10~20%が報酬金となります。トータルで50~60万円程度の費用がかかることが一般的です。

慰謝料の相場は、一般人で10~50万円、事業主で50~100万円程度です。悪質性や被害の程度により金額は変動します。手続き完了までには6ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。費用対効果を考慮しつつ、泣き寝入りしないことが重要です。

加害者にならないための心構えと投稿前のチェックポイント

誰もが加害者になりうる時代だからこそ、投稿前の確認が重要です。ここでは誹謗中傷をしないための具体的な心構えを解説します。

なぜ人は誹謗中傷をしてしまうのか

インターネットの匿名性が、攻撃的な発言を助長します。「バレないだろう」という誤った安心感から、現実では言えない言葉を軽率に使ってしまいます。また、「自分は正義」という歪んだ正義感も原因の一つです。

日常のストレスや嫉妬心、承認欲求なども誹謗中傷の引き金となります。特に感情的になっている時は、普段なら書かないような攻撃的な内容を投稿しがちです。しかし、匿名であっても発信者は特定可能であり、法的責任は必ず問われる可能性があることを忘れてはいけません。

投稿前に確認すべき4つのポイント

投稿ボタンを押す前に、以下の4点を必ず確認してください。

  1. 相手が目の前にいても同じことが言えるか
  2. 実名で発信できる内容か
  3. 情報に根拠はあるか、事実確認はしたか
  4. 感情的になっていないか

特に怒りや悲しみなど強い感情を感じている時は、一度下書き保存して時間を置きましょう。翌日読み返すと、その投稿の危険性に気づくことが多いです。デマの拡散も法的責任を問われるため、情報の真偽確認も欠かせません。

正当な批判と誹謗中傷の境界線

憲法で保障される「表現の自由」は、他者を傷つける自由ではありません。建設的な意見か、人格攻撃かが重要な分かれ目です。政策批判と個人攻撃では法的評価も異なります。

正当な批判には、①事実の公共性、②目的の公益性、③真実性の3要件が求められます。これらを満たさない単なる悪口は、表現の自由では守られません。相手の改善や社会の利益につながる発言を心がけることが、加害者にならないための第一歩です。

よくある質問

匿名で投稿したらバレないんじゃないですか?

匿名投稿でも発信者は特定可能です。

インターネット上の投稿には必ずIPアドレスという「ネット上の住所」が記録されます。この記録が保存されている間は、被害者が発信者情報開示請求を行えば、サイト管理者やプロバイダを通じて投稿者の氏名や住所が開示されます。2022年の法改正により手続きも簡素化され、より迅速な特定が可能になりました。「匿名だから大丈夫」という考えは完全に誤りです。

本当のことを書いたのに名誉毀損になるんですか?

事実であっても名誉毀損罪は成立します。

名誉毀損罪は、内容の真偽に関わらず「人の社会的評価を下げる事実を公然と摘示する」ことで成立します。たとえ相手に前科があっても、それをSNSに書き込めば罪に問われる可能性があります。ただし、公共の利害に関わり、公益目的で、真実である場合は例外的に違法性が阻却されることもありますが、一般的な悪口や個人攻撃では認められません。

誹謗中傷の相談はどこにすればいいですか?

まずは警察や法務省の相談窓口に連絡してください。

緊急性が高い脅迫などは110番通報、それ以外は警察のサイバー犯罪相談窓口が適切です。法務省の「みんなの人権110番」やインターネット人権相談受付窓口でも無料で相談できます。法的措置を検討する場合は、ネット投稿トラブルに強い弁護士への相談が有効です。学生の場合はスクールカウンセラーも身近な相談先となります。

慰謝料はいくらもらえますか?

一般人で10~50万円、事業主で50~100万円が相場です。

慰謝料額は、誹謗中傷の内容、悪質性、被害の程度、被害者の社会的地位などにより変動します。芸能人や著名人の場合は100万円を超えることもありますが、一般人では数十万円程度が現実的です。ただし、弁護士費用が50~60万円程度かかることを考慮すると、費用倒れになる可能性もあります。それでも、加害者への抑止効果や自身の名誉回復という観点から法的措置を取る意義はあります。

子供が誹謗中傷の加害者になったらどうなりますか?

未成年でも法的責任を問われ、親も損害賠償責任を負う可能性があります。

14歳以上であれば刑事責任を問われ、少年法に基づく処分を受けます。14歳未満でも児童相談所への通告対象となります。民事では、親が監督義務違反として損害賠償責任を負うケースが多く、数十万から数百万円の賠償金支払いを命じられた判例もあります。日頃から家庭でネットリテラシー教育を行い、SNSの使い方について親子で話し合うことが重要です。

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初めてのご相談に
不安がある方へ

弁護士、専門家へのご相談のご経験があるかはそこまで多くないと思います。ちょっとしたポイントを抑えていただくだけで、ご自身のお悩みの解決方法が見つかりやすいことがあります。ご不安を感じられる方はぜひ、このポイントを抑えたうえでご相談ください。

  • POINT 1

    相談をオンラインでしている様子

    早めのご相談

    「まだ大丈夫」と思っていても、早めに相談することで安心につながります。弁護士は身近な相談相手として、問題が大きくなる前の解決をサポートしてくれます。

  • POINT 2

    書類のイメージ

    書類や文書の整理

    相談には契約書や領収書、メモなど関係しそうな資料をできるだけ整理しましょう。自分では些細に思えても、弁護士にとっては大切な手がかりになることがあります。

  • POINT 3

    時系列を整理している様子

    時系列の確認

    問題の流れを日付順に整理してメモしておくと、弁護士が状況を理解しやすくなります。細かく書く必要はなく、大まかな出来事を箇条書きにするだけで十分です。

  • POINT 4

    考えている様子

    お考えの整理

    相談をスムーズに進めるために、「自分はどうしたいのか」を整理しておきましょう。望む結果が明確だと、弁護士もそれに合わせて具体的なアドバイスがしやすくなります。