開示請求の成功率はどのくらい?誹謗中傷の発信者特定を成功させる方法
発信者情報開示請求の成功率は、権利侵害の明白性とログ保存期間内の迅速な対応によって大きく左右されます。公的な統計データは存在しませんが、名誉毀損や侮辱など明確な権利侵害があり、投稿から間をおかずに、手続きを開始すれば、成功の可能性は十分にあります。
開示請求が成功するかは何で決まりますか?重要な要件
SNSや掲示板で誹謗中傷を受けたとき、「本当に相手を特定できるのか」と不安になりますよね。発信者情報開示請求とは、匿名の投稿者の身元を特定するための法的手続きです。2022年10月の法改正により、従来は2回必要だった裁判手続きが1回にまとまり、被害者の負担が大幅に軽減されました。
開示請求の成功率を決定づける最も重要な要素は、法律で定められた要件をすべて満たしているかという点です。これらの要件を事前にチェックすることで、あなたのケースの成功見込みが判断できます。
権利侵害の明白性が認められるケース
まず大前提として、投稿によってあなたの法的な権利が明らかに侵害されている必要があります。「不快だ」という主観的な感情だけでは不十分で、以下のような客観的な権利侵害が必要です。
名誉毀損は「〇〇は前科持ちだ」「不倫している」など、具体的な事実を挙げて社会的評価を下げる投稿です。侮辱は具体的事実なしに「死ね」「ブス」などの暴言を吐く行為、プライバシー侵害は本人の許可なく個人情報や写真を公開する行為が該当します。
ただし、公共の利害に関わる事実で公益目的があり、内容が真実である場合は例外的に権利侵害が認められないこともあります。
ログ保存期間という決定的なタイムリミット
開示請求の成否を分ける最もシビアな要件がログの保存期間です。プロバイダが通信記録を保存している期間は法律で定められておらず、各社の判断に委ねられています。
一般的に携帯キャリアは約3ヶ月、固定回線は約6ヶ月程度でログは自動削除されます。この期間を過ぎると、どんなに悪質な投稿でも物理的に特定が不可能になります。誹謗中傷を発見したら、一日でも早く行動を開始することが成功のために極めて重要です。
その他の必要要件
開示請求には、投稿内容から被害者を特定できること(同定可能性)も必要です。ハンドルネームでの投稿でも、前後の文脈から本人が特定できれば要件を満たします。
また、開示された情報を損害賠償請求や刑事告訴など正当な目的で使用すること、請求相手が法律で定められた開示関係役務提供者(SNS運営者やプロバイダ)であること、求める情報が発信者情報(氏名、住所、IPアドレス等)の範囲内であることも要件となります。
どんな投稿なら開示請求は認められますか?SNS別の成功事例
開示請求が成功するかどうかは、投稿されたプラットフォームの特性や投稿内容によって大きく変わります。ここでは主要SNSごとに、どのような投稿が開示に至りやすいのか具体例を見ていきましょう。
X(旧Twitter)での誹謗中傷
Xは匿名性が高く拡散力も強いため、誹謗中傷が起きやすいプラットフォームです。しかし、適切な要件を満たせば匿名アカウントでも特定は可能です。
「〇〇社の△△部長は部下と不倫している」のような具体的な事実を挙げて個人の社会的評価を下げる投稿は、名誉毀損として開示が認められやすいです。一方で「△△部長ってムカつく」といった抽象的な悪口は、主観的な感想の範囲内として棄却される可能性があります。
Instagramでの肖像権侵害
Instagramでは写真や動画を使った誹謗中傷が問題になります。無断で撮影した個人の顔写真を投稿し「この人、痴漢してた」と虚偽のキャプションを付けた場合、肖像権侵害と名誉毀損が同時に成立する悪質なケースとして開示が認められやすいです。
ただしDM(ダイレクトメッセージ)での暴言は、「特定電気通信」に該当しないため、発信者情報開示請求の対象外です。
匿名掲示板やGoogleマップの口コミ
5ちゃんねるなどの匿名掲示板では、特定の店舗スレッドで「店長の〇〇は昔バイトに手を出した」といった投稿がされることがあります。スレッドタイトルや前後の書き込みからどの店の誰を指しているかが明確な場合、同定可能性の要件を満たすと考えられ、他の要件も満たせば開示が認められます。
Googleマップの口コミで「このクリニックは詐欺だ」と虚偽のレビューを投稿した場合、カルテ等で事実無根であることを証明できれば、信用毀損として開示に至る可能性があります。
開示請求にかかる費用はいくら?費用倒れを避ける方法
発信者情報開示請求を検討する上で最大の懸念は「費用倒れ」のリスクであるという場合が多いでしょう。多額の弁護士費用をかけたのに、回収できる慰謝料が少なくて赤字になってしまうケースは実際に存在します。
弁護士費用の目安と内訳
発信者を特定するまでの弁護士費用は、着手金と成功報酬を合わせて50万円~80万円程度が一般的です。内訳は以下のとおりです。
IPアドレス開示には着手金20~40万円、成功報酬10~20万円、契約者情報開示には着手金20~30万円、成功報酬10~20万円がかかります。これに裁判所への印紙代などの実費が数万円加わります。
発信者特定までの期間は、新制度を利用しても3ヶ月から1年程度を見込んでおく必要があります。海外事業者が相手の場合はさらに時間がかかることもあります。
なぜ費用倒れが起きるのか
費用倒れが起きる主な原因は2つあります。まず、日本の慰謝料相場が比較的低いことです。個人の名誉毀損で10~50万円、侮辱では1~10万円程度が相場となっています。
次に、弁護士費用が二段階でかかることです。発信者特定の費用に加え、その後の損害賠償請求でも別途弁護士費用が発生することが通例なのです。これにより合計費用が100万円を超えたのに、回収できた慰謝料は30万円だったというケースが起こり得るのです。
費用倒れリスクを下げる3つの対策
費用倒れを完全に避けることは難しいですが、リスクを下げる方法はあります。
第一に、損害賠償の見込み額を事前にシミュレーションすることです。悪質性や被害の大きさによっては相場以上の慰謝料が認められる可能性もあるため、弁護士と綿密に検討しましょう。
第二に、開示請求の弁護士費用自体を損害として請求することです。近年、この費用を加害者に請求することを認める裁判例が増えており、被害者にとって有利な流れができています。
第三に、金銭以外の目的を明確にすることです。「加害者に謝罪させたい」「再発を防ぎたい」という名誉回復や再発防止が主目的であれば、費用対効果だけでは測れない価値があります。
証拠保全から弁護士相談まで、今すぐ取るべき行動は?
誹謗中傷を発見したら、冷静かつ迅速に行動することが成功への鍵となります。ここでは具体的に何をすべきか、優先順位をつけて解説します。
まず最初にやるべき証拠保全
弁護士に相談する前にあなた自身ができる最重要の準備が証拠保全です。投稿はいつ削除されるかわからないため、発見したらすぐにスクリーンショットを撮影しましょう。
撮影時は投稿内容全体とURL、投稿日時、投稿者のアカウント情報がすべて写るようにすることが重要です。これらの情報が一つでも欠けていると、証拠として不十分と判断される可能性があります。スマートフォンだけでなく、パソコンの画面でも撮影しておくとより確実です。
弁護士に相談するタイミング
証拠を保全したらすぐにでも弁護士に相談するのがベストです。ログ保存期間は3~6ヶ月と非常に短く、手続きには数ヶ月かかるため時間との勝負になります。
「もう少し様子を見よう」と考えているうちにログが消えてしまい、特定が不可能になりかねません。早期の相談があなたの権利を守る最大の鍵となります。
信頼できる弁護士の選び方
開示請求に強い弁護士を選ぶポイントは3つあります。インターネット投稿トラブルの解決実績が豊富かを必ず確認しましょう。発信者情報開示請求はITと法律の両方の知識が求められる特殊な分野です。
次に費用体系が明確で、費用倒れのリスクも説明してくれるかも重要です。着手金や成功報酬の内訳、リスクについて誠実に説明してくれる弁護士を選びましょう。
最後にコミュニケーションが円滑かも大切です。専門用語を分かりやすく説明し、不安な気持ちに寄り添ってくれる弁護士であれば、長期戦になっても信頼関係が保たれやすいと言えるでしょう。
よくある質問
開示請求の成功率は何パーセントですか?
公的な統計データは存在しません。成功率は個別の事案が法的要件を満たしているかに基本的に依存するため、一概にパーセンテージで示すことはできません。あなたのケースが要件を満たしているかを弁護士に診断してもらうことをおすすめします。
アカウントを削除されても特定できますか?
はい、可能です。投稿者がアカウントを削除しても、サイト運営者やプロバイダのサーバーには一定期間通信記録が残っています。このログが保存されている期間内であれば、アカウントの有無にかかわらず開示請求は可能です。
軽い悪口でも開示請求されることはありますか?
はい、十分にあり得ます。開示請求が認められるかは投稿者の「気持ちの軽さ」ではなく、その投稿が客観的に他者の権利を侵害しているかで判断されます。冗談のつもりでも、内容が侮辱罪や名誉毀損にあたれば開示請求の対象となります。
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