家や土地の生前贈与と相続どちらが得?税金と手続きを徹底比較

税金面では相続が有利ですが、認知症対策や相続トラブル回避なら生前贈与が有効です。相続なら基礎控除3,600万円〜と小規模宅地等の特例が適用されれば、節税が可能なケースもあります。一方、生前贈与はもらった財産の金額によっては贈与税が高額になりやすいものの、財産を指定した相手に渡せます。家族の状況と将来のリスクを考慮した選択が重要です。

家や土地の生前贈与と相続はどちらが得ですか?

不動産の承継方法で悩む方は多いですが、まず知っておきたいのは税金・費用面では相続の方が有利だということです。

相続が税金面で有利な3つの理由

相続には、生前贈与にはない税制上の優遇措置が多数用意されています。

1つ目の理由は基礎控除額の大きさです。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」という計算式で、例えば配偶者と子ども2人なら4,800万円まで非課税になります。一方、贈与税の基礎控除は年間110万円、もしくは特別控除は累計2500万までとなっています。

2つ目は不動産取得税がかからないことです。贈与で不動産を取得すると評価額の4%(2027年3月31日までの軽減税率は3%)の不動産取得税がかかりますが、相続なら0円です。3,000万円の不動産なら約90万円万円の差が出ます。

3つ目は登録免許税の税率です。名義変更の際、贈与は評価額の2%、相続は0.4%と5倍の差があります。

具体的なシミュレーション比較

実際の数字で比較してみましょう。評価額3,000万円の自宅を20歳の子どもに承継するケースを考えます。

承継方法税金・費用の内訳合計費用 
生前贈与(暦年贈与)※1贈与税:約1,035万円不動産取得税:約90万円登録免許税:60万円約1,185万円
相続 ※2相続税:0円(基礎控除内)不動産取得税:90円登録免許税:約12万円約12万円

※1 贈与税:暦年課税による基礎控除110万円、特例贈与財産用による特例税率45%・控除額265万円

※1 不動産取得税:軽減税率3%(2027年3月31日までの軽減税率)

※1 登録免許税:2%

※2 登録免許税:0.4%

このように、税金だけで100倍以上の差が生じることもあります。ただし、相続時精算課税制度を使えば贈与税を大幅に軽減できる場合もあります。

生前贈与を選ぶメリットは何ですか?

税金面では不利な生前贈与ですが、お金には代えられない重要なメリットがあります。家族の状況によっては、これらのメリットが税金のデメリットを上回ることもあります。

認知症対策として資産凍結を防げる

高齢化が進む中、認知症による資産凍結は深刻な問題になっています。

認知症で判断能力が低下すると、本人名義の不動産は売却も賃貸も困難になります。介護施設の費用を捻出するために自宅を売りたくても、成年後見人を立てる必要があり、手続きに時間とコストがかかります。

生前贈与なら、元気なうちに子どもに所有権を移せるため、将来的に子どもが親のために不動産を活用(売却して介護費用に充てるなど)できます。実際に、親が75歳を過ぎたタイミングで自宅を子どもに贈与し、その後認知症になっても円滑に介護施設へ入所できたケースがあります。多くあります。

相続トラブル(争族)のリスクを軽減できる

遺産分割協議は、家族関係を壊す大きなリスクを抱えています。

特に不動産は物理的に分割できないため、誰が相続するかで対立しやすく、最悪の場合は裁判官による審判にまで発展します。遺言書があっても遺留分の問題が残る場合もあり、感情的な対立が起きる可能性もあります。

生前贈与であれば、親が元気なうちに明確な意思表示ができます。「このアパートは家業を継ぐ長男に」「自宅は同居している長女に」といった親の想いを、実現しやすいのです。贈与の際に家族全員で話し合い、理解を得ておけば、将来の争いを防くことができる可能性があります。

相続時精算課税制度で贈与税を大幅軽減

2024年の税制改正により、相続時精算課税制度がより使いやすくなりました。

この制度を使えば、60歳以上の親から18歳以上の子や孫への贈与で、累計2,500万円まで贈与税が非課税になります。さらに、年間110万円の基礎控除も新設され、この部分は相続時にも加算されません。

例えば、評価額3,000万円の不動産を贈与する場合、通常なら贈与税は約1,035万円ですが、相続時精算課税制度を使えば390万円分に対する20%(78万円)で済みます。将来の相続時に精算は必要ですが、特定の相続人に財産を渡したい場合の有力な選択肢です。

相続時に使える節税特例にはどんなものがありますか?

相続には強力な節税特例が用意されており、これらを活用できるかどうかで税額が大きく変わる可能性があります。生前贈与では使えない特例ばかりなので、しっかり理解しておきましょう。

小規模宅地等の特例で土地評価額を最大80%減額

相続税における節税策が小規模宅地等の特例です。

自宅の土地を配偶者や同居親族が相続する場合、330㎡までの部分について評価額を最大80%減額できます。例えば、評価額5,000万円の土地が1,000万円として計算されるため、相続税を劇的に圧縮できます。

適用要件は細かく定められていますが、主なポイントは「配偶者が相続する」または「同居していた親族が相続して住み続ける」ことです。別居している子どもでも、持ち家がない場合は適用できる可能性があります(家なき子特例)。

賃貸アパートの土地なら、200㎡まで50%減額される貸付事業用宅地等の特例もあります。生前贈与してしまうとこれらの特例は一切使えないため、慎重な判断が必要です。

配偶者の税額軽減で非課税

配偶者が相続する財産については、特別な優遇措置があります。

「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分」のいずれか多い金額まで、配偶者の相続税はゼロになります。つまり、ほとんどのケースで配偶者は相続税を支払う必要がありません。

ただし、注意点があります。一次相続(夫から妻)で配偶者控除を最大限使って妻に財産を集中させると、二次相続(妻から子)で子どもの相続税負担が重くなる可能性があります。トータルの税負担を考えた遺産分割が重要です。

基礎控除と法定相続人数の関係

相続税の基礎控除は、法定相続人の数によって変わります。

基礎控除額の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人数」です。相続人が多いほど控除額が増える仕組みで、例えば配偶者と子ども3人なら5,400万円まで非課税になります。

生前贈与で失敗しないための注意点は?

生前贈与にはリスクもあります。計画を誤ると家族間のトラブルを招いたり、思わぬ負担が生じたりする可能性があるため、実行前に必ず確認すべきポイントを解説します。

遺留分侵害で家族がもめるリスク

特定の子どもだけに不動産を贈与すると、他の相続人から不満が出る可能性があります。

法律では、配偶者や子どもなど、兄弟姉妹以外には最低限の遺産取り分として「遺留分」が保障されています。例えば、全財産である自宅を長男だけに贈与した場合、次男は遺留分侵害額請求として長男に金銭の支払いを求めることができます。

対策としては、不動産を贈与する代わりに他の相続人には生命保険金を用意するなど、全体のバランスを考えることが大切です。また、贈与の理由や想いを家族全員に説明し、理解を得ておくことも重要です。

贈与契約書の作成は必須

口約束での贈与は、後々大きなトラブルの原因になります。

不動産の贈与では必ず書面で贈与契約書を作成してください。これは名義変更の手続きで必要なだけでなく、税務署の調査が入った際の証拠にもなります。契約書には「誰が」「誰に」「いつ」「どの不動産を」贈与したかを明確に記載します。

より確実にするなら、公証役場で公正証書として作成することをおすすめします。費用は数万円かかりますが、偽造や改ざんの心配がなくなります。

贈与後の固定資産税負担を考慮する

見落としがちですが、贈与後の固定資産税は受贈者が支払うことになります。

例えば、収入の少ない子どもに自宅を贈与した場合、翌年から子ども宛てに固定資産税の納税通知書が届きます。年間10万円以上の固定資産税がかかる不動産も珍しくありません。

贈与を受ける側に継続的な税負担に耐えられる経済力があるか、事前に確認することが大切です。場合によっては、親が固定資産税相当額を毎年援助する取り決めをすることもあります。

よくある質問

孫に直接不動産を贈与することはできますか?

はい、孫への直接贈与は可能です。これは「世代飛ばし贈与」と呼ばれ、親から子、子から孫という二段階の相続税を一段階スキップできるメリットがあります。

孫が18歳以上なら相続時精算課税制度も利用でき、2,500万円まで贈与税が非課税になります。ただし、贈与者が亡くなった際に孫が財産を取得すると、相続税が2割加算されるペナルティがあることに注意が必要です。

住宅ローンが残っている家でも贈与できますか?

贈与は可能ですが、非常に慎重な検討が必要です。住宅ローンの団体信用生命保険に加入していない場合、ローン残債も一緒に引き継ぐ「負担付贈与」という扱いになり、通常の贈与とは税務上の取り扱いが異なります。

まず、金融機関の承諾が必須で、受贈者の返済能力が審査されます。また、贈与税の計算では不動産の評価額が相続税評価額ではなく時価で計算されるため、税額が高くなる可能性があります。実行前に税理士に相談することをおすすめします。

相続と生前贈与で迷ったら誰に相談すべきですか?

税理士への相談が最も確実です。相続税・贈与税の専門知識を持ち、あなたの状況に応じた具体的なシミュレーションを作成してくれます。

初回相談は無料の事務所も多く、複数の法律の専門家の意見を聞くことをおすすめします。司法書士は登記手続きの専門家なので、名義変更の具体的な手続きについて相談できます。家族信託など他の選択肢も含めて検討したい場合は、相続分野に注力している弁護士への相談も有効です。

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初めてのご相談に
不安がある方へ

弁護士、専門家へのご相談のご経験があるかはそこまで多くないと思います。ちょっとしたポイントを抑えていただくだけで、ご自身のお悩みの解決方法が見つかりやすいことがあります。ご不安を感じられる方はぜひ、このポイントを抑えたうえでご相談ください。

  • POINT 1

    相談をオンラインでしている様子

    早めのご相談

    「まだ大丈夫」と思っていても、早めに相談することで安心につながります。弁護士は身近な相談相手として、問題が大きくなる前の解決をサポートしてくれます。

  • POINT 2

    書類のイメージ

    書類や文書の整理

    相談には契約書や領収書、メモなど関係しそうな資料をできるだけ整理しましょう。自分では些細に思えても、弁護士にとっては大切な手がかりになることがあります。

  • POINT 3

    時系列を整理している様子

    時系列の確認

    問題の流れを日付順に整理してメモしておくと、弁護士が状況を理解しやすくなります。細かく書く必要はなく、大まかな出来事を箇条書きにするだけで十分です。

  • POINT 4

    考えている様子

    お考えの整理

    相談をスムーズに進めるために、「自分はどうしたいのか」を整理しておきましょう。望む結果が明確だと、弁護士もそれに合わせて具体的なアドバイスがしやすくなります。