遺産相続手続きは自分でできる?必要書類と具体的な進め方を解説

遺産相続手続きは、条件が揃えば自分で行うことが可能です。専門家への報酬(数十万円〜100万円以上)を節約できる一方、膨大な時間と手間がかかります。相続人が少なく関係が良好で、遺産が預貯金中心の場合は、自分で手続きを進めることも十分可能です。複雑なケースでは専門家への依頼を検討しましょう。

相続手続きを自分でできるケースと専門家に頼むべきケース
相続手続きを自分で行うか専門家に依頼するかは、あなたの状況によって判断が変わります。まずは、どちらが適しているかを見極めることが大切です。
自分で手続きできる3つの条件
遺産相続手続きを自分で進めるには、3つの重要な条件があります。
まず1つ目は、相続人の数が少なく関係が良好であることです。相続人が配偶者と子供だけなど2〜3人程度で、全員が協力的であれば、書類のやり取りもスムーズに進みます。
2つ目は、遺産の内容がシンプルであることです。預貯金と有価証券のみで不動産が含まれない場合、手続きの難易度は格段に下がります。特に不動産の相続登記は専門知識が必要なため、これがないだけでハードルが大きく下がるのです。
3つ目は、平日の日中に時間を確保できることです。役所や金融機関の窓口は平日の9時〜15時頃までしか開いていません。戸籍謄本の収集だけでも複数回足を運ぶ必要があるため、時間的な余裕は必須条件といえるでしょう。
専門家への依頼が必要になる5つのパターン
一方で、以下のようなケースでは、法律の専門家に相談・依頼する方が安全に進められる可能性が高いです。
相続人間でトラブルがある場合は、弁護士に相談することで法的に適切な対応がしやすくなります。。遺産の分け方で意見が対立していたり、遺言書の内容に納得できない相続人がいる場合、素人が解決するのは困難です。
相続人に特別な事情がある場合も要注意です。未成年者、認知症の方、行方不明者がいる場合は、家庭裁判所での特別な手続きが必要になります。
遺産に不動産が複数ある場合は、司法書士への依頼を検討しましょう。登記申請書の作成は専門知識が必要で、ミスをすると何度も法務局に足を運ぶことになります。
相続税の申告が必要な場合(遺産総額が基礎控除額3,000万円+600万円×法定相続人数を超える)は、税理士への相談が賢明です。特例適用で税額が大きく変わることもあります。
故人に借金がある可能性がある場合は、相続放棄の期限が3ヶ月と短いため、迅速な対応が必要です。専門家のサポートを受けながら進めることで、取り返しのつかないミスを防げます。
メリット・デメリットを理解して判断する
自分で手続きを行う最大のメリットは費用の大幅な節約です。法律の専門家報酬を支払わずに済むため、実費のみ(おおむね10万円前後)で手続きを終えられるケースもあります。また、手続きを通じて相続に関する知識が身につき、故人の財産と向き合うことで気持ちの整理にもつながります。
しかし、デメリットも無視できません。膨大な時間と労力が必要になり、特に戸籍謄本の収集は想像以上に大変です。また、手続きミスのリスクも高く、相続人の見落としや登記漏れなどが後々大きなトラブルに発展する可能性があります。
これらのメリット・デメリットを十分に理解した上で、あなたの状況に最適な選択をすることが重要です。
相続手続きの流れと期限を守るべき3つの重要ポイント
相続手続きには法律で定められた期限があり、期限を過ぎると手続きが難しくなる場合があるため、早めの対応が重要です。全体の流れを把握し、計画的に進めることが成功の鍵となります。
3ヶ月以内の相続放棄は最優先で判断する
相続手続きで最も重要な期限が相続放棄の3ヶ月です。相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければ、自動的に借金も含めてすべての財産を相続することになります。
まず故人の財産調査を迅速に行い、預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も徹底的に調査します。クレジットカードの利用明細、消費者金融からの郵便物、連帯保証人になっていないかなど、見落としがないよう注意深く確認しましょう。
借金が財産を上回る場合は、相続放棄を検討することもできます。ただし、故人の預金を少しでも使ってしまうと相続放棄ができなくなるため、葬儀費用の支払いなども慎重に行う必要があります。
10ヶ月以内の相続税申告で押さえるべき基準
相続税の申告・納税期限は相続開始から10ヶ月以内です。まず確認すべきは、相続税がかかるかどうかの判断です。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合、基礎控除額は4,800万円となります。遺産総額が基礎控除額を超える場合は、原則として相続税の申告が必要になります。
相続税の計算は複雑で、小規模宅地の特例や配偶者控除など、適用できる特例を活用することで税額が大きく変わります。申告が必要な場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
不動産の相続登記は3年以内の義務
2024年4月から不動産の相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に手続きを行わなければなりません。正当な理由なく登記を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
不動産の相続登記は、法務局で行います。必要な書類は、故人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書、固定資産評価証明書などです。登録免許税として、例えば不動産評価額の0.4%を収めた場合は、2000万円なら8万円かかります。
法務局では無料の登記相談を実施しており、個別の状況に応じたアドバイスまでは相談できないとされていますが、自分で手続きを進める場合は一度利用を検討してみるとよいでしょう。ただし、複数の不動産がある場合や共有持分がある場合は、司法書士への依頼を検討した方が安全です。
必要書類の集め方と手続きを効率化する実践テクニック
相続手続きで大変なのが必要書類の収集です。効率的に進めるための具体的な方法とテクニックをご紹介します。
戸籍謄本を効率的に集める最新の方法
相続人確定のために必要な故人の出生から死亡までの戸籍謄本の収集は、時間がかかる作業です。
2024年3月から始まった「広域交付制度」を活用すれば、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄本をまとめて請求できるようになりました。これにより、従来のように複数の役所を回る必要がなくなり、大幅な時間短縮が可能です。
ただし、コンピュータ化されていない古い戸籍は対象外のため、完全に一か所で済むとは限りません。まずは最寄りの役場で広域交付を試み、取得できなかった分だけ個別に請求する方法が効率的です。
戸籍の請求時は、「相続手続きに使用するため、出生から死亡までの連続した戸籍が必要」と明確に伝えることで、役所の担当者も必要な戸籍を判断しやすくなります。
法定相続情報一覧図で手続きを大幅に簡略化
複数の金融機関で手続きする場合、その都度戸籍謄本の束を提出するのは大変です。そこで活用したいのが「法定相続情報一覧図」です。
法務局で一度認証を受ければ、以降は戸籍謄本の代わりにこの1枚で済むため、手続きがに楽になることが期待できます。申請は無料で、必要な枚数を交付してもらえます。
作成には、収集した戸籍謄本一式と相続関係説明図(家系図のようなもの)を法務局に提出します。法務局のホームページにひな形があるので、それを参考に作成しましょう。特に金融機関が3行以上ある場合は、作成することをおすすめします。
金融機関での手続きをスムーズに進めるコツ
銀行での相続手続きは、準備と段取りが重要です。
まず故人の死亡を連絡すると口座が凍結されるため、公共料金の引き落とし口座を事前に変更しておきましょう。その後、残高証明書を請求し、同時に相続手続きの必要書類一覧と銀行所定の届出用紙をもらっておきます。
相続人全員の署名・実印が必要なため、遠方の相続人がいる場合は郵送でのやり取りになります。書類に不備があると差し戻しになるので、記入例をよく確認し、不明な点は銀行に問い合わせながら進めましょう。
ネット銀行の場合は店舗がないため、コールセンターとのやり取りが中心になる銀行もあります。手続き方法がウェブサイトに詳しく記載されているので、事前によく確認しておくことが大切です。
自分でやる場合の費用は?法律の専門家との料金比較
費用面は多くの方が気になるポイントです。実際にかかる費用を具体的に見ていきましょう。
自分で手続きした場合の実費内訳
自分で手続きを行っても、役所や法務局に支払う実費は必ず発生します。
戸籍謄本や除籍謄本の取得には1通450円〜750円かかり、故人の転籍回数によっては10通以上必要になることもあります。相続人全員の印鑑証明書や住民票も各300円程度必要です。これらの書類取得だけで1〜2万円程度かかります。
不動産がある場合は、登録免許税が最も大きな出費となる場合が多く、評価額2,000万円の不動産なら8万円、5,000万円なら20万円です。また、登記事項証明書や固定資産評価証明書の取得にも数千円かかります。
その他、郵送費や交通費を含めると、不動産1件・相続人3人の一般的なケースで総額10万円程度の実費が目安となります。
司法書士・税理士の報酬相場
司法書士に相続登記を依頼する場合、司法書士に依頼する場合は、5万〜15万円前後に設定している事務所が多いようです。。不動産の数や評価額、相続人の人数によって変動します。戸籍収集や遺産分割協議書の作成も含めると、さらに5万円〜10万円程度追加になることもあります。
税理士への相続税申告の依頼は、税理士への依頼料は、遺産総額の0.5%〜1.0%を目安にしている事務所もあります。遺産総額5,000万円なら25万円〜50万円、1億円なら50万円〜100万円となります。ただし、事務所によって料金体系は大きく異なるため、複数の見積もりを取ることが推奨されます。
トータルコストで判断する重要性
費用だけで判断すると、自分でやった方が圧倒的に安く見えます。しかし、時間コストやリスクも含めて総合的に判断することが重要です。
例えば、平日に10回役所に通う必要がある場合、有給を使ったり仕事を調整したりする負担は小さくありません。また、手続きミスで後々トラブルになった場合、結果的に法律の専門家に依頼するより高くつく可能性もありえます。
特に相続税申告は、特例の適用漏れで数百万円の差が出ることもあります。節税額を考慮すれば、税理士報酬を払っても十分にメリットがある場合もあります。
まずは無料相談を活用し、費用対効果を検討した上で、最適な方法を選択することをおすすめします。
よくある質問
相続手続きを検討している方から寄せられる、代表的な質問にお答えします。
相続手続きは何から始めれば良いですか?
まず死亡届の提出と遺言書の確認から始めます。
死亡届は7日以内に市区町村役場へ提出する必要がありますが、通常は葬儀社が代行してくれます。次に遺言書の有無を確認し、自宅の金庫や仏壇、銀行の貸金庫などを探します。公正証書遺言の場合は、最寄りの公証役場で検索できます。
並行して、相続財産の調査を開始します。預金通帳、不動産の権利証、固定資産税の納税通知書、生命保険証券などを集め、財産の全体像を把握しましょう。特に借金の有無は3ヶ月以内の相続放棄に関わるため、優先的に調査することが大切です。
平日に時間が取れない場合はどうすれば良いですか?
郵送請求や代理人制度を活用することで、ある程度対応可能です。
戸籍謄本や住民票は郵送で請求できます。各市区町村のホームページから申請書をダウンロードし、本人確認書類のコピーと手数料分の定額小為替を同封して送付します。1〜2週間程度で返送されてきます。
また、委任状があれば家族が代理で手続きすることも可能です。ただし、金融機関での相続手続きや不動産登記など、本人対応が必要な手続きもあるため、完全に平日の時間が取れない場合は、司法書士や行政書士への依頼を検討した方が現実的なケースもあります。
相続人の一人が協力してくれない場合の対処法は?
まずは話し合いでの解決を目指し、難しければ調停を検討します。
連絡が取れる場合は、なぜ協力できないのか理由を聞き、不安や疑問を解消することから始めます。財産目録を作成し、透明性のある話し合いを心がけることで、協力を得られることもあります。
それでも協力が得られない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停委員が間に入って話し合いを進めてくれるため、当事者同士では難しい合意形成が可能になります。ただし、調停には数ヶ月から1年程度かかることもあるため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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