未払い残業代を自分で請求する方法は?証拠集めから交渉まで完全ガイド

未払い残業代は労働者の正当な権利であり、自分で請求することも十分可能です。まず証拠(タイムカード、メール履歴など)を集め、残業代を計算し、内容証明郵便で会社に請求します。請求には3年の時効があるため、早めの行動が大切です。

未払い残業代 自分で サマリ画像

未払い残業代が発生しているか確認する方法は?11のチェックポイント

「自分の働き方で本当に残業代を請求できるのか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。実は、気づかないうちに未払い残業代の被害に遭っているケースもあります。まずは、あなたの状況が請求対象になるか確認してみましょう。

法定労働時間を超えた残業や深夜・休日労働はありませんか?

労働基準法では、1日8時間・週40時間を超えた労働に対して、必ず割増賃金を支払わなければなりません。この基本ルールは、正社員だけでなくアルバイトやパート、契約社員にも適用されます。

例えば、朝9時から夜7時まで働いた場合、休憩1時間を除くと9時間労働となり、1時間分の残業代が発生します。また、午後10時から翌朝5時までの深夜労働には25%以上の割増賃金が必要です。週に1日の法定休日に出勤した場合も、35%以上の割増賃金の対象となります。

これらの基本的な労働時間のルールは、会社の規模や業種に関係なく適用されます。「うちは小さな会社だから」「みんな残業代なんてもらっていない」という理由で諦める必要はありません。

固定残業代や年俸制でも超過分は請求できる可能性があるのをご存知ですか?

「固定残業代が含まれているから追加の残業代は出ない」と会社から説明されていませんか。実は、固定残業代で定められた時間を超えて働いた場合、原則として超過分は別途請求できます

例えば、月30時間分の固定残業代が含まれている場合、月40時間残業したら10時間分は追加で請求可能です。また、固定残業代の金額や時間数が雇用契約書に明記されていない場合、その制度自体が無効となる可能性も高いのです。

年俸制の場合も同様です。「年俸制だから残業代は出ない」というのは大きな誤解で、労働基準法の適用を受ける以上、時間外労働には割増賃金が発生します。年俸に残業代が含まれると主張する会社も、その内訳を明確に示せなければ、全額請求できる可能性があります。

名ばかり管理職や隠れた労働時間も残業代の対象です

店長や課長といった役職についていても、実際にはシフトに縛られて自由に出退勤できない部下の採用や解雇の権限がない等、経営者と一体的な立場で会社の運営に関する意思決定に関与できる立場にない場合は、法律上の「管理監督者」には該当しないと判断される可能性あります。このような「名ばかり管理職」の方も、残業代請求の対象です。

また、見落としがちな労働時間として、始業前の朝礼や準備時間タイムカード打刻後の片付けや清掃など対象となる可能性があります。会社の指示で自宅に仕事を持ち帰った場合も、労働時間として認められる可能性があります。

休憩時間中に電話番や来客対応を任されている場合、それは「手待ち時間」として労働時間にカウントされます。15分や30分単位で労働時間を切り捨てる会社も多いですが、労働時間は原則1分単位で計算しなければならないため、切り捨てられた時間分も請求対象となります。

証拠集めで請求の成否が決まる!今すぐ始める5つの準備

未払い残業代請求において特に重要なのは客観的な証拠です。会社は「残業を指示していない」「勝手に残っていただけ」と反論してくることが予想されるため、あなたの主張を裏付ける証拠がなければ、請求は困難になります。今すぐ始められる証拠集めの方法を詳しく解説します。

タイムカードやPCログなど労働時間を証明する証拠の集め方は?

まず最優先で集めるべきは、労働時間を客観的に証明できる証拠です。タイムカードがある職場なら、毎月必ずコピーを取るか、スマートフォンで撮影しておきましょう。デジタルの勤怠管理システムを使用している場合は、自分の勤務記録画面をスクリーンショットで保存するのがおすすめです。

会社のPCを使用している方は、ログイン・ログオフの時刻も重要な証拠とみなされる場合があります。Windowsのイベントビューアーで確認できることもあるので、可能であれば記録しておきましょう。また、始業直後や終業間際に送信した業務メールは、その時刻に仕事をしていた証拠となえます。

オフィスビルのセキュリティカードの入退室記録も、非常に客観性の高い証拠となる可能性があります。また、スマートフォンのGoogleマップのタイムライン機能を有効にしておけば、会社にいた時間がGPSデータとして自動的に記録されます。深夜まで残業した日のタクシー領収書も、忘れずに保管しておきましょう。

給与明細や雇用契約書など請求額計算に必要な書類とは?

労働時間の証拠と同じくらい重要なのが、給与体系を明らかにする書類です。残業代の計算には、基本給だけでなく各種手当の内訳が必要になるため、給与明細は最低でも過去3年分は保管しておきましょう。

雇用契約書や労働条件通知書には、所定労働時間や休日、賃金に関する重要な情報が記載されています。これらの書類がない場合は、会社に再発行を求めることができます。また、就業規則や賃金規程には残業代の計算方法が定められているため、確認することをおすすめします。会社には就業規則の周知義務があるので、閲覧を拒否されることはありません。

固定残業代制度を採用している会社の場合は、その内訳(何時間分でいくらか)を明確に示す書類が特に重要です。この内訳が不明確な場合、固定残業代制度自体が無効となる可能性があります。

証拠がない・退職済みでも諦めない!証拠を確保できる可能性のある方法

「もう退職してしまって手元に証拠がない」という方も諦める必要はありません。会社には労働時間の記録を5年間保存する法的義務があります。個人での開示請求に応じない会社でも、弁護士が受任通知を送り、内容証明郵便で正式に請求すれば、多くの場合応じざるを得なくなる可能性が高くなります。

証拠を隠したり破棄したりする恐れがある会社に対しては、裁判所の「証拠保全」という手続きも利用できます。これは訴訟前に証拠を確保する強力な手段です。

実は、会社が証拠開示を拒否すること自体が、あなたに有利に働く場合があります。労働時間管理の義務を怠っていることの証明となり、裁判では労働者側の主張が認められやすくなる傾向があるのです。「証拠がないから無理」と諦めず、まずは行動を起こすことが大切です。

自分で未払い残業代を請求する3つのステップとは?

証拠が揃ったら、いよいよ会社への請求です。弁護士に依頼せず自分で請求を進める場合の、具体的な手順を解説します。多くの方が「難しそう」と感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば十分に対応可能です。

内容証明郵便での請求書送付が重要な理由とテンプレートは?

最初のステップは、会社に対して内容証明郵便で請求書を送付することです。これには2つの重要な意味があります。まず、残業代請求の時効(3年)の完成を6ヶ月間猶予することができます。さらに、「いつ、どのような内容を請求したか」が郵便局によって公的に証明されるため、後の交渉で「そんな請求は受けていない」と言われる心配がなくなります。

内容証明郵便に記載する内容としては、一般的に以下のようなものが挙げられます。

・生年月日

・相手方の企業名・住所・代表取締役名

・あなたの氏名・住所、会社との雇用契約について

・残業の事実と残業代未払いの事実について

・請求金額、支払い期限、支払い方法、振込先口座

内容証明郵便は郵便局の窓口で手続きできます。同じ文書を3通用意し、1通は相手に送付、1通は郵便局保管、1通は差出人控えとなります。費用は約2,000円程度で、配達証明を付けることで相手が受け取ったことも証明できます。

会社との直接交渉で気をつけるポイントと成功のコツは?

内容証明郵便送付後、会社から連絡があり交渉の場が設けられることがあります。この際、最も大切なのは感情的にならず冷静に対応することです。怒りをぶつけたくなる気持ちは理解できますが、目的は「未払い賃金を回収すること」だと常に意識しましょう。

交渉前には、証拠を時系列で整理し、請求額の根拠を明確に説明できるよう準備します。また、「最低でもこの金額は譲れない」という最低ラインと、「ここまでなら譲歩できる」という落としどころを事前に決めておくとよいでしょう。交渉内容は必ずICレコーダーなどで録音し、相手にも一言断りを入れておきましょう。

会社から和解案を提示された場合、その場で即決せず「一度持ち帰って検討します」と伝え、冷静に内容を吟味することも検討しましょう。合意に至った場合は、必ず書面で合意書を作成します。口約束だけでは後で反故にされるリスクがあるため、支払金額、支払日、支払方法を明記し、双方が署名・押印することが大切です。

労働基準監督署への申告は無料で効果的?活用方法は?

会社が交渉に応じない、または話し合いが平行線の場合は、労働基準監督署(労基署)への申告も効果的に働く場合もあります。これは無料で利用でき、会社に対してプレッシャーを与えることができる可能性もあります。

労基署に行く際は、単なる「相談」ではなく「申告」として対応してもらうことが重要です。「賃金不払の申告をしたい」と明確に伝え、準備した証拠を提示しましょう。客観的な証拠があれば、労基署は会社への立ち入り調査や是正勧告を行なってくれる場合もあります。

ただし、労基署の是正勧告には法的な強制力はないため、悪質な会社は無視することもあります。また、労基署はあなたの代理人として交渉してくれるわけではありません。それでも、会社によっては労基署からの指導を重く受け止め、支払いに応じることもあります。労基署への申告行政による是正・解決のルートとして、交渉や裁判に比べ負担が軽いですが、直接的な強制力のある支払い命令を出せるわけではないため、必ずしも解決につながるとは限らないという点に注意が必要です。

残業代の計算方法と請求時の注意点は?時効や税金について

未払い残業代を請求する際には、正確な金額の計算と、時効などの法的な知識が必要です。ここでは、実際の計算方法と、請求時に知っておくべき重要なポイントを解説します。

1時間あたりの基礎賃金と割増率の計算方法は?

残業代の計算は、まず「1時間あたりの基礎賃金」を算出することから始めます。計算式は「月給÷1ヶ月の平均所定労働時間」です。月給には基本給だけでなく役職手当なども含みますが、家族手当、通勤手当、住宅手当は除外されることに注意が必要です。

次に、残業の種類に応じた割増率を確認します。通常の時間外労働は1.25倍月60時間を超える部分は1.5倍(中小企業も2023年4月から適用)、深夜労働(22時〜5時)は0.25倍の割増法定休日労働は1.35倍となります。時間外労働と深夜労働が重なる場合は、割増率も合算されます。

例えば、月給32万円、年間休日125日、1日8時間勤務の場合、1時間あたりの基礎賃金は2,000円となります。月70時間の時間外労働があった場合、60時間分は2,000円×1.25=2,500円、残り10時間分は2,000円×1.5=3,000円で計算し、合計18万円の残業代が発生することになります。

残業代請求の時効3年とは?いつから起算される?

未払い残業代の請求には3年の時効があり、これは非常に重要なポイントです。時効は給料日の翌日から起算され、1ヶ月単位でどんどん進行していきます。例えば、2021年4月25日払いの給料に含まれるべき残業代は、2024年4月26日で時効となり請求できなくなります。

つまり、請求を先延ばしにすればするほど、請求できる金額が毎月減っていくということです。仮に毎月10万円の未払い残業代があった場合、1ヶ月遅れるごとに10万円ずつ請求可能額が減少していきます。3年分で360万円請求できたものが、半年後には300万円しか請求できなくなるのです。

ただし、内容証明郵便を送付することで、時効の完成を6ヶ月間猶予することができます。この期間を利用して交渉や準備を進めることが可能ですが、6ヶ月以内に労働審判や訴訟などの法的手続きを取らなければ、時効は再び進行を始めます。時効で権利を失わないよう、早めの行動が何より大切です。

退職後でも請求可能?税金はどうなる?

「もう会社を辞めてしまったから請求できない」と思っている方も多いですが、退職後でも時効内であれば請求可能です。むしろ、会社との関係を気にする必要がないため、退職後に請求する方が精神的に楽だという人が多いのが実情です。

最適な戦略は、在職中に証拠を集めておき、退職が決まった直後または退職後すぐに請求を開始することです。

残業代は、通常であれば残業代も含めた給料に対して所得税が課税されます。そのため、後日会社から未払い残業代の支払いを受けた場合には、所得税の課税対象となります。未払い残業代の支払いに関する紛争が解決した場合には、「和解金」や「解決金」名目で未払い残業代が支払われることがあります。

和解金・解決金の実態が未払い残業代に該当する場合には、所得税が課税されることになります。

ただし、和解金・解決金として未払い残業代が支払われる場合には、賃金の実質を有しないものとして処理され、税務上は、「一時所得」として扱われることになる場合もあります。税金の扱いについては、弁護士や税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問

未払い残業代請求について、多くの方が抱く疑問にお答えします。実際の請求を検討する際の参考にしてください。

請求したら会社から解雇や嫌がらせを受けませんか?

未払い残業代の請求を理由とした解雇や不利益な扱いは違法であり無効です。

労働基準法では、労働者が正当な権利を行使したことを理由に、解雇や減給などの不利益な取り扱いをすることを明確に禁止しています。もし会社がそのような報復行為を行った場合、その処分は法的に無効となるだけでなく、別途慰謝料を請求できる可能性もあります。

とはいえ、在職中の請求は職場の雰囲気が悪くなる可能性があることも事実です。そのため、退職が決まってから、または退職後に請求を行うケースも多くあります。会社との関係性を考慮しながら、最適なタイミングを選ぶことが大切です。

弁護士に依頼せず自分で請求するのは現実的に可能ですか?

証拠が揃っていて請求額が少額であれば、自分での請求も十分可能です。

特にタイムカードなどの客観的な証拠があり、会社が話し合いに応じる姿勢を見せている場合は、この記事で紹介した手順に従って自分で進めることも可能です。内容証明郵便の送付や労働基準監督署への申告は、個人でも問題なく行えます。

ただし、会社が全く応じない場合、複雑な反論をしてくる場合は、弁護士への相談を検討した方が良いでしょう。最近は初回相談無料の事務所も多く、成功報酬制(着手金0円)を採用している事務所もあるため、まずは相談だけでもしてみることをおすすめします。

固定残業代制や年俸制の会社でも本当に請求できますか?

固定残業代制でも超過分は請求できる可能性があり、年俸制でも残業代は発生します。

固定残業代制の場合、例えば「月30時間分の残業代を含む」とされていても、実際に40時間残業したら10時間分は追加で請求できます。また、固定残業代の時間数や金額が雇用契約書に明記されていない場合、その制度自体が無効となり、残業代を全額請求できる可能性があります。

年俸制についても、労働基準法の適用を受ける以上、時間外労働には必ず割増賃金が発生します。「年俸制だから残業代は出ない」という会社の主張は法的に誤りです。年俸の中に残業代が含まれているという場合でも、その内訳が不明確であれば、別途残業代を請求する権利がある場合もあります。

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不安がある方へ

弁護士、専門家へのご相談のご経験があるかはそこまで多くないと思います。ちょっとしたポイントを抑えていただくだけで、ご自身のお悩みの解決方法が見つかりやすいことがあります。ご不安を感じられる方はぜひ、このポイントを抑えたうえでご相談ください。

  • POINT 1

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    早めのご相談

    「まだ大丈夫」と思っていても、早めに相談することで安心につながります。弁護士は身近な相談相手として、問題が大きくなる前の解決をサポートしてくれます。

  • POINT 2

    書類のイメージ

    書類や文書の整理

    相談には契約書や領収書、メモなど関係しそうな資料をできるだけ整理しましょう。自分では些細に思えても、弁護士にとっては大切な手がかりになることがあります。

  • POINT 3

    時系列を整理している様子

    時系列の確認

    問題の流れを日付順に整理してメモしておくと、弁護士が状況を理解しやすくなります。細かく書く必要はなく、大まかな出来事を箇条書きにするだけで十分です。

  • POINT 4

    考えている様子

    お考えの整理

    相談をスムーズに進めるために、「自分はどうしたいのか」を整理しておきましょう。望む結果が明確だと、弁護士もそれに合わせて具体的なアドバイスがしやすくなります。