離婚時の財産分与とは?対象財産から割合まで徹底解説

離婚時の財産分与とは、婚姻中に夫婦で築いた財産を原則2分の1ずつ分ける制度です。専業主婦でも家事・育児の貢献が正当に評価され、収入の有無に関わらず共有財産の半分を受け取る権利があります。ただし、請求期限は離婚後2年以内と決まっているため、早めの行動が大切です。

財産分与とは何ですか?基本的な仕組みを知りたい
離婚を検討されている方にとって、財産分与は今後の生活を左右する重要な問題です。ここでは財産分与の基本的な仕組みについて、分かりやすく解説します。
婚姻中に築いた財産を分ける制度
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分配する法的な制度です。たとえ夫名義の預金や不動産であっても、それが婚姻中に形成されたものであれば、妻の協力があってこそ築けた財産として扱われます。
特に重要なのは、専業主婦の家事や育児といった貢献も、外で働くことと同等に評価されることが原則である点です。「私は収入がないから財産はもらえないのでは」と心配される方も多いですが、その心配は不要です。家事労働によって配偶者が仕事に専念できる環境を整えたことも、立派な財産形成への貢献として認められています。
財産分与は離婚原因に関係なく請求できる権利であり、浮気をした側からでも請求可能です。これは財産分与があくまで「夫婦の共有財産の清算」を目的としているためです。
慰謝料や養育費との違い
離婚時に発生するお金の問題として、財産分与のほかに慰謝料や養育費がありますが、これらは全く性質が異なります。
慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償であり、不貞行為やDVなど離婚原因を作った側が支払うものです。一方、養育費は子供の生活・教育のために必要な費用で、親権を持たない親が毎月支払い続ける義務があります。
財産分与はこれらとは独立した制度で、婚姻中の財産を清算する手続きです。そのため、慰謝料や養育費とは別々に請求でき、それぞれ異なる基準で金額が決定されます。例えば、妻の不倫が原因で離婚する場合でも、妻は財産分与を受ける権利があり、別途慰謝料を夫に支払うことになります。
請求期限は離婚後2年以内
財産分与には厳格な請求期限があることに注意が必要です。離婚成立から2年以内に請求しなければ、請求できなくなります。この2年という期間は「除斥期間」と呼ばれ、時効のように中断やリセットができません。
相手と話し合いを続けているだけでは不十分で、2年以内に家庭裁判所へ調停を申し立てるなど、具体的な法的手続きを開始する必要があります。離婚を急いで財産分与を後回しにした結果、請求期限を過ぎてしまうケースも少なくありません。
ただし、離婚前であれば期限の心配はないため、できれば離婚と同時に財産分与についても取り決めておくことが理想的です。離婚後の生活設計を確実にするためにも、この期限は必ず頭に入れておいてください。
財産分与の対象になる財産・ならない財産は?
財産分与を進めるにあたって、まず把握すべきなのが「何が分与の対象になり、何がならないか」という点です。財産は大きく「共有財産」と「特有財産」に分けて考える必要があります。
共有財産として分与対象になるもの
共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産のことで、これらが財産分与の対象となります。重要なポイントは、財産の名義が夫婦のどちらになっているかは関係ないということです。
例えば、夫名義の預金口座に入っている給料も、妻の家事労働があってこそ稼げたものとして共有財産になります。同様に、妻がこっそり貯めた「へそくり」も、原資が家計からのものであれば共有財産として扱われます。
具体的な共有財産には、預貯金、不動産(土地・建物)、自動車、株式や投資信託などの金融資産、生命保険の解約返戻金、退職金や企業年金の婚姻期間対応分などが含まれます。また、住宅ローンや教育ローンなど、家族の生活のために作った借金も、マイナスの共有財産として考慮されます。
特有財産として対象外のもの
特有財産とは、夫婦の協力とは無関係に、個人が単独で取得した財産のことで、原則として財産分与の対象になりません。これには大きく分けて3つのパターンがあります。
まず、結婚前から持っていた財産です。独身時代の貯金や、結婚前に購入した株式、不動産などがこれにあたります。次に、結婚後でも相続や贈与で得た財産は、夫婦の協力とは無関係に取得したものとして特有財産になります。親から相続した実家や、親族から夫婦の一方に贈与されたことが明らかな金銭などが該当します。
最後に、個人的な借金も特有財産です。ギャンブルや個人的な浪費、趣味のための借金など、家族の生活と関係ない借金は、作った本人だけの責任となります。特有財産であることを主張する場合は、通帳の履歴や遺産分割協議書など、証拠となる書類を準備しておくことが重要です。
判断が難しい財産の扱い方
実際の財産分与では、共有財産か特有財産か判断に迷うケースがよくあります。代表的なものをいくつか見ていきましょう。
子供名義の預金は、名義は子供でも原資が夫婦の収入である場合、実質的に夫婦の財産として共有財産に含まれます。児童手当を貯めた分や、将来の学費として親が積み立てた分などが該当します。ただし、祖父母からのお年玉は子供固有の財産です。
夫婦が経営する会社の財産は、法人と個人は別人格のため原則対象外ですが、個人事業と変わらない小規模な会社で、会社財産と家計が混在している場合は対象となることがあります。
特有財産を元手にした投資の利益も判断が分かれます。例えば、夫が相続した1000万円で不動産投資を行い、妻も物件管理に協力して価値が1500万円に増えた場合、増加分の500万円は夫婦の協力による成果として、共有財産と判断される可能性があります。
財産分与の割合はどう決まりますか?
財産分与で最も気になるのが「どのような割合で分けるか」という点です。基本的な考え方と、その根拠について詳しく解説します。
原則は2分の1ルール
日本の裁判実務では、共有財産を原則として2分の1ずつ分ける「2分の1ルール」が確立されています。これは夫婦の収入差や職業に関係なく適用される基本原則です。
このルールの背景には、「夫婦は互いに協力し支え合って財産を築いた」という考え方があります。たとえ夫の年収が1000万円で妻が専業主婦だったとしても、妻の家事労働があったからこそ夫は仕事に専念でき、高収入を得られたと評価されるのです。
実際の裁判例でも、医師と専業主婦の夫婦、会社経営者とパート勤務の妻など、収入に大きな差があるケースでも、ほとんどの場合で2分の1の割合が認められています。この原則は、経済的に弱い立場にある配偶者を保護し、婚姻中の貢献を公平に評価するための重要なルールとなっています。
専業主婦でも半分もらえる理由
「専業主婦だから財産分与で不利になるのでは」という不安を持つ方が多いですが、専業主婦の場合も、原則どおり2分の1の分与を請求できます。
家事労働の価値を考えてみてください。炊事、洗濯、掃除、育児、介護など、これらをすべて外注すれば月額数十万円かかるでしょう。専業主婦はこれらの労働を無償で行い、配偶者が安心して仕事に専念できる環境を整えているのです。この「内助の功」は、外で働いて収入を得ることと同等の価値があると認められています。
裁判所も「専業主婦の家事労働は、夫の職業活動を支える基盤であり、財産形成への実質的な貢献」という判断を示しており、収入の有無で財産分与の割合が変わることは原則ありません。自信を持って正当な権利を主張してください。
割合が変わる例外的なケース
2分の1ルールは強力な原則ですが、特別な事情がある場合に限り、割合が修正されることがあります。ただし、これは本当に例外的なケースです。
まず、特殊な才能や資格による超高額収入の場合です。プロスポーツ選手、著名な芸術家、特殊技能を持つ医師などが、その個人的能力により通常では考えられない高額な財産を築いた場合、その特別な貢献が考慮されることがあります。単に「夫の方が収入が多い」という程度では、2分の1ルールは変わりません。
次に、一方の浪費やギャンブルで財産を著しく減らした場合です。共有財産を勝手に使い込んだり、借金を重ねたりした側の取り分が減らされることがあります。また、婚姻期間が極端に短い(数か月程度)場合も、財産形成への貢献度に差があるとして、割合が調整される可能性があります。
よくある疑問
財産分与について、多くの方が抱える疑問にお答えします。
財産を隠されたらどうすれば良いですか?
相手の財産隠しが疑われる場合は、別居前に証拠を集めることが最も重要です。通帳のコピーや写真、保険証券、給与明細など、あらゆる財産資料を確保しておいてください。
別居後でも対策はあります。弁護士に依頼すれば、弁護士会照会制度を使うことにより、相手方の財産状況がわかる場合もあります。また、離婚調停や裁判の中で、裁判所から金融機関へ調査嘱託を行ってもらうことも可能です。
相手が急に大きな買い物をしたり、現金を引き出したりしている場合は、その使途を追及することも大切です。説明できない支出は、財産隠しの証拠となる可能性があります。一人で対応が難しい場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
住宅ローンが残っている家はどうなりますか?
住宅ローンが残っている不動産は、評価額からローン残高を引いた金額が財産分与の対象になります。例えば、評価額3000万円でローン残高2000万円なら、差額の1000万円を夫婦で分けることになります。
問題は、評価額よりローン残高が多い「オーバーローン」の場合です。この場合、不動産の財産価値はゼロとみなされ、財産分与の対象になりません。ただし、誰がローンを払い続けるか、連帯保証人をどうするかは別途話し合いが必要です。
離婚後も一方が住み続ける場合は、金融機関への連絡も忘れずに行ってください。ローン契約の名義変更には金融機関の審査が必要で、収入によっては変更できないこともあります。トラブルを避けるため、取り決めは必ず公正証書にしておきましょう。
※財産分与は夫婦間の清算であり、債権者に対する返済義務の帰趨は契約名義等に従います。
財産分与に税金はかかりますか?
財産分与として受け取るお金や財産には、原則として贈与税はかかりません。これは財産分与が「もともと自分のものを受け取る」という性質だからです。
ただし、不動産を渡す側には注意が必要です。購入時より値上がりしている不動産を財産分与すると、渡す側に譲渡所得税がかかる場合があります。詳しくは税理士に相談することをお勧めします。
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